春画展

永青文庫で2015/12/23まで開催されている「春画展」を見た。

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僕も朝一番で大量の春画をおひとり様で見る、と言うシュールな事も出来るお年頃になりました。

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僕が着いた時はすでにチケットを買う人の列ができていた。

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北斎、歌麿、国芳、春信、もう数え切れないほどの肉筆画と版画。ネット黎明期にエロがその普及に多大な推進役を果たしたように、浮世絵が大衆のものになる過程で、春画の果たした役割の大きさは想像に難くない。浮世絵が西洋にまで影響を与えることになる芸術にまで発展した、両輪のうちのひとつだったはずなのに、それは無いことになっている。片側の車輪だけで動いていることになってる。馬鹿げてるね。

それにしてもここに描かれている世界は自由だ。
そして、それを上回るほど、鑑賞している女性たちが自由だ。
「・・・この毛の表現が・・・」
「・・・足の位置がおかしく無い?」
「豆版(小さい小さいサイズに精緻に刷られた版画)を新年のお祝いに配ってたのか。昔から男って馬鹿だねぇ〜」
僕は作品はもとより、女性たちが作品の前でおおらかに声にする感想も大いに楽しんだ。ちょっと肩身が狭いおひとり様の親父とはもう、すでに鑑賞する心持ちが違う。素晴らしい。

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豆版(公式サイトより転載)本物はすごくすごく小さいよ。だけど彫り、刷り、どちらも妥協がなくて小さな紙面の充実ぶりはハンパない。

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永青文庫は昭和25年(1950)、16代当主・細川護立によって、細川家に伝来する歴史資料や美術品等の文化財を後世に伝える目的で財団法人として設立された。

という、斬新な吹き抜けの設計の建物も楽しんだし、余情を”deep feeling”としたり、夕涼みを””yu-Suzumi”=enjoying the evening cool”なんていう英訳も楽しんだ。

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あまりの人気に会場は老若男女でごった返し、30分で出てきたけど、もっとゆっくり見たかった。人気なのがわかる楽しくて刺激的な展覧会だった。
そしてこの、展覧会の開催はとても大変で、最終的には細川元首相の尽力もあってやっと開催に漕ぎ着けたと聞く。なんて時代だ。江戸時代にはるかに遅れを取っている。この国の今を見ていると、これからタブーはもっともっと増えていくだろう。

春画展日本開催実行委員会の皆様からお話をいただいて、2015年秋、永青文庫で、春画展を開催することにいたします。これは、日本における、初めての、本格的な春画展になります。春画は日本文化の歴史に間違いなくあり、最高の美術品であったということから、実行委員会の皆様は、2013年秋から2014年にかけて大英博物館で開催された春画展を、日本でも行おうとこれまで尽力されてこられましたが、多くの博物館、美術館では、残念ながら実現に至らなかったと伺っています。永青文庫は規模も小さく、至らないところの多い施設ですが、春画展日本開催への皆様の情熱と意義に応えて、及ばずながら、ご協力したいと考えた次第です。永青文庫理事長 細川護熙
永青文庫理事長
細川護熙

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我が国の春画は、江戸時代を通じて制作され、大名から庶民まで貴賤を問わず広く愛好されました。人間の自然な営みである性を主題とする絵画は古今東西にわたって存在しますが、その中で日本の春画は質量共に群を抜いており、その豊かな発想や表現技法によってまさに世界に誇るべき美の世界を創出しています。21世紀を迎え、フィンランド、スペインを始め欧州の各地で「春画展」が開催されて好評を博しました。春画の学術的な国際研究も進み、シンポジウムも度々開催されて来ています。こうした動きの集大成としてロンドンの大英博物館で「春画 日本美術における性とたのしみ」展が開催され、大きな成功をおさめたことは、皆様もご承知の通りです。

この展覧会の開催に際しては、大英博物館でも後援者探しに苦慮され、私どもにもご相談がありました。その後、様々な経緯がありましたが、最終的に我々両名がスポンサーをお引き受け致しました。さらに、二人でShunga in Japan LLPという組合を立ち上げ、日本でも展覧会を開く活動も開始しました。このLLPには、多くの文化人、美術研究家の方々にご理解、ご賛同をいただき、また今回の春画展日本開催実行委員会にも加わっていただいています。

以降、国内での開催会場を探して、多くの美術館、展覧施設と交渉を重ねて参りましたが、会場を確保することは困難でありました。春画については、20年以上も前から書籍、雑誌などでは無修正で市場に流通しており、何ら問題は発生していないのです。複製品の出版が可能なのにオリジナル作品は鑑賞出来ない、という奇妙な状況にあって、私どもとしては日本展の開催を諦めることが出来ず、各方面に打診、交渉を続けて参りましたところ、永青文庫の細川護熙理事長より春画展開催のための会場提供のご快諾をいただくことが出来ました。誠に嬉しい次第であります。

展示の内容は大英博物館展と同一ではありませんが、同博物館の全面的な協力、さらに国内の諸美術館、個人の所蔵家の方々の積極的なご支援により、日本展独自の質の高い展示が実現しています。改めて皆様に感謝申し上げると共に、我が国で最初となるこの本格的な展覧会で、多くの皆様に春画の神髄をご堪能いただくことを心より願っております。

春画展日本開催実行委員会 淺木正勝 浦上満

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※2015/12/23まで→公式サイト