先月の東京での個展の折、いただいたオーダーの中で、掲載を了承していただいたものを紹介させていただきます。
ご依頼いただいた方のメールから。
実はこの春父が長寿を全うして他界しましたが、娘のわたしには位牌もなく祈る対象が写真だけというのが心寂しくおもっておりました。宗教には全く縁がないのに我ながら不思議ですが、机の横にある両親の写真の前に作品を置いて心の中で手を合わせ、亡き父を偲ぶ縁 ”thanks of the memories” としたいと願っています。
(写真:西原直紀)
・形は、個展でいただいた葉書のなかの「山河」(上の写真の作品)を横15cmぐらいに縮小したもの(存在感があります)
・二つの石に、父と母を重ねたいと思います。
机上で、いつも眼に入ることを考えて赤や黒より緑色の御影石を提案させていただきました。そして外側はやわらかな印象の仕上げ。内側を磨く。狭いすき間からその磨いた濃い色がわずかに見えるように。
完成してすぐに仕事場で撮った写真。横15cm、高さ6cm。
(飾るだけではなくて日常的に手にとることも考えて、元の作品から少しラインを修正しています)
ちょうど手に包めるほどの大きさ。是非、見るだけじゃなくて、時々手にとってみてください、とメールしました。
手に包んでお父様のことを思うと、お父様とともにいるような気持ちになれるかもしれません。小さいけれど確かな存在感と手触り。
お届けした後、こんなメールをいただきました。
机上に置いて小さな彫刻作品を毎日愛でたいとおもう人はたくさんいるでしょう。
今回わたしも新たな発見がありました。それは頭でイメージしたものが制作者の手を通して命を吹き込まれ、「かたち」になって帰ってくるという楽しさ!(依頼者ならではの喜びってあるのですね)
そして「石」がもつ存在感の楽しさ!
小さければ小さいなりの「石」の存在感もあるのですね。
もともとミケランジェロが好きですから、あらためて「彫刻」の素晴らしさを実感しました。ちょっと大袈裟とおもわれたかもしれませんね。
でも二つの石をちょっと離したり、ずらしたり。表情も変わるし、ほんとうに楽しいです。
今回の作品もテーマは同じようなものでしたが、今まで作った石の彫刻の中では最小でした。でも、作る気持ちと制作する事に、大きさは関係ありませんでした。そして手の平に包める大きさの彫刻もいいな、と思いました。
今回の制作の機会と、ブログへの掲載を快諾いただいた御依頼のお客さまに改めて感謝します。
ありがとうございました。
※掲載にあたり、いただいたメールの一部を編集させていただいています。
【2016/07/14:追記】
メールでこの作品を机上に置いているところの写真を、依頼者の方が送ってきてくださいました。
彫刻やクラフトの作品が旅立っていった空間に置かれたところを見せてもらうのは本当に嬉しいものです。
掲載の許可をいただきましたので追記します。
ありがとうございます。
View Comments (2)
作品はもちろん、依頼者さんのご両親への気持ちも素敵ですね。
自分も手に取ってみたいです。
作っていただいたペン立てとプレートを毎日、手に持って感触を楽しんだり、模様をじーっと眺めています。
きっと依頼者の方もそうなることでしょう。
立派なセラピーです!
そういう意味ではやっぱり立体は強いね。
小さくても石ってやっぱりそれなりの重さがあって、肌触りがあって、その時々の温度があって。
見るだけじゃなくて、さわったり持ったりする楽しさがある。
今回のは小さくてちょうどいい重さだけど、基本、思ったより重すぎるのがたまにキズ・笑