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    Categories: Art

まちあわせのばしょ

ずっと開催を心待ちにしていた展示会へ行った。

「まちあわせのばしょ 〜まんなからへんで〜」
今日1月27日から29日までの3日間。
時々一緒にグループ展もやってもらっている、くさかあやこさんの作品展。 染めやアクセサリー や布。素材は全て「自然」からの恵み。山にひとりで入って植物とか、蛾の繭とかうっとりする自然の色と造形をいただいて来て、染めたり、アクセサリーにしたりしてる。
僕は、あやこさんが自然のもので染めた糸を見てその色に一目惚れして、話したこともないのにグループ展を一緒にやって欲しいとお願いした。だから初めての一緒のグループ展の初日はあいさつもぎこちなかったはず。あれから、もう何回も一緒に作品展をやる機会があったし、お互いの個展にでかけるようになった。

初めて一緒に作品展をやった「あぐりっと」で愛媛のみかんを買ってお土産にする。

今回の作品展の会場はあやこさんの友だちの建てた、ピラミッドと同じ傾斜の屋根を持つ素敵な一軒家が舞台。

「今日 あなたに幸せがふってきますヨ!!めちゃめちゃハッピーなことおこりますヨ あなたのための時をすごしてネ!」
(あ、全部その通りになったなぁ)って思いながら、今これを書いてます。

吊り戸をがらがらと開けて石の三和土の玄関に入ります。

いつもはあやこさんの工房にかかってる看板と”I hope Peace フラッグ”

急な階段を3階まで昇るとピラミッドの屋根のてっぺんまで行かれます。小さな石があった。

先日までの寒波が嘘のような暖かな日。祝福されているみたいな気持ち。

所狭しとあやこさんの作品が、床にも、壁にも、梁から吊されて、縁側にまであふれるように展示されている。

ちびぐるみなあやこさんだ!

糸曼荼羅も藍色の布の前に木の枝に吊られて展示されてる。この展示、素敵。

屋外で風に揺られてるドリームキャッチャー。

そして布。

縁側で日向ぼっこすると手が届きそうな梅のつぼみがほんの少しふくらんでいた。

ストーブの前に陣取って、火をずっと見て番をしてくれていた者、約一名。わかります。火を見ていると飽きない。

あやこさんの点描画、どんどん素敵になってきてる。今度壁一面くらいの大きさの見たい(点描画でそれは大変です)。

今回の作品展は、現時点の集大成のような展示だ。圧巻。

あ、僕があげた石の螺旋が、美しい蛾の繭と組み合わされて小さな灯りになってる・嬉

僕が一目惚れした、自然のモノで染められた糸。淡いのに強い。素材の名前が書いてあるから確認しながら見る楽しみもある。予想通りの色のものもあれば意外なものもある。確か、桜だってピンクの花びらではピンクに染まらなくて、茶色の木だとピンクに染まったはず。

朝一番で行ったのだけど、お客様がどんどんおみえになって会場にいっぱい。

それほど広くない空間で、友だち同士でもないのに、みんな一緒の時間を過ごしていることになんの違和感も無い。

なんか、ものすごくピースフルな感じ。ピースフルな時間。ピースフルな空間。

そしてあやこさんの靴下はピースフルというよりは派手派手パワフル!

あやこさんとしゃべってるところをさゆりさんが吹き抜けてる上から撮ってくれていた。(ありがと!)

それぞれ、好きなところに座ってお茶をいただいたり

さゆりさんが差し入れてくれたおにぎりをいただいたり。

よもぎを発酵させたものと一緒に炊いたという、うるち米は、餅米かと思うような食感もあり、プチプチ感もあり不思議だった。キクイモの味噌漬けもシャキシャキ美味しい。さゆりさんのつくるものはいつも、とても美味しい

去年の春に、あやこさんと陶芸家の池田さんと3人展をやった時にも、最終日にクリスタルボウルの演奏をしたくれたまりこさんが、この特別な空間でまた鳴らしてくれました。

この家の主、なおこさんの玉手箱。フタには葉っぱが乗っている。この伊達冠石の小さな彫刻はなおこさんが作ったものだ。菅野直子さん。石の造形作家。

野外彫刻展で一緒になる機会があって、何度か顔を合わせたことがあった。なおこさんが伊達冠石の採石場の山の上で仕事をしていた頃に、わざわざ会いに行ったことがある。僕は社交的じゃないし、親しくない人と会うのはちょっと苦手。その時、なんでそれほど親しい訳でもないのに山の上まで会いに行ったのか、今も思い出せない。滅多にないことだ。とにかく、山の上に、なおこさんを訪ねてふたりで話をして、同じ時間を過ごした。どんな話をしたのかも、良く思い出せないけど、はにかんだような笑顔だけが、今でもはっきりと思い出される。

初めてあやこさんと一緒に2013年に作品展を開催した期間中に、その、なおこさんが若くして亡くなってしまった。なおこさんが僕のことを、少年みたいで良い人だよ、とよく話していたんだって事をあやこさんに教えてもらってびっくりした。そして僕があやこさんを誘って一緒に作品展をやることになったのも、すごく喜んでくれたっていう事も教えてもらった。

僕が誰かに「一緒に作品展をやってください」なんて言ったのは、あやこさんが初めて。まして、話したことも無い人にそんなお願いするようなキャラクターじゃない。そうか、なおこさんだったのか!僕とあやこさんを引き合わせてくれたのは。

なんか、またあのはにかんだような笑顔を思い出したよ。もっと話をしておけば良かったな。

なおこさんの家の礎石は伊達冠石を自ら石ノミではつって作ったものだ。その仕事量たるや。しかもひとつひとつの仕事がとてもていねい。水対策をきちんとした仕事はひと手間も二手間も多くかけて作られていた。帰りに縁の下に潜っていって、この大黒柱を受けている礎石も見た。まるでひとつの作品のようだ。

庭に残る作品もひとりでゆっくり見せてもらった。ダイヤモンドの歯で削ったものと違って、石ノミではつった仕事は、ありありと手仕事の痕跡が残って体温すら感じるようだ。仕事しているときの息づかいを感じるようだ。まるで、すぐそばにいるみたいに。

そうか、今日のこの作品展は、ものすごく仲の良かった、あやこさんとなおこさんの二人展だったんだ。

「まちあわせのばしょ 〜まんなからへんで〜」この作品展のタイトルも、今回の展示の世界を柔らかく表している。

まんなからへんでふたりのスピリットが再会したのを、ピースフルな空間で感じていたのは僕だけではなかったはず。

今、来月の「アート&クラフトフェア」に向けて、伊達冠石でたくさんの一輪挿しを作っていて、ずいぶんいろんなバリエーションを作ったと思っていたけど、なおこさんの作った伊達冠石の作品の数々にあっさりと打ちのめされもした。だけど、それをはるかに上回る幸せな気持ち。真摯にもう一度初心に戻って作っていこうと思えた。

ありがとう、あやこさん。そしてなおこさん。

【2016/01/30:追記】
この作品展の前に、あやこさんがブログにエントリーした文章を、改めて読んでいて、等身大ですごく共感したので、あやこさんに許可をもらってこちらにもシェア。
ずっと延ばしてきたこと
今度の作品展には言い訳は無かったと僕は感じたよ。

『ここにいようといなかろうと(生きていようといなかろうと)さしてたいした問題じゃないよね』

という言葉が、今時々頭の中で廻る。

【2016/02/02:追記】
この作品展の後に、あやこさんがブログにエントリーした文章がとても良かった。作品展のエネルギーを受け止めて、一部は流し、残し、芯に入れて、また放ったって感じがしたので、こちらにもシェア。
まちあわせのばしょ ~まんなからへんで~

たまき:
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