この世界の片隅に

「この世界の片隅に」を見た。(ネタバレありません)

どうしても見たくて時間を作ってカミさんと仙台に来た。

年取ったのでカミさんとふたりで同じ映画を見れば「夫婦割」で安い。

良い映画だった。
心の深いところに届く映画を見た後は、なかなかそれを言葉にできない。
でも、何気なく思える当たり前の日々が、どれだけ大切なものか。改めて深く実感した。
特に震災や原発事故を経験したし、日本が、そして世界が悪しき方向に向かっているように感じられる今。
すずが絵を描くシーンが特に印象に残ってる。息と合わせて線を引く感じとかスピードの遅い早いとか、描いてる感の違和感の無さ、見てて気持ちよかった。呉の町の四季の俯瞰のシーンだけでもぐっとくるものがあった。
巷で大絶賛されているのんさん(本名を使えない状況に置かれているという暗黒)の、すずの声の説得力がすごい。すずさんがまさにすずさんとして「生きた」のはあの声の力があればこそ。

ひとりでも多くの人に見てもらいたい映画。

映画を見た後で余韻に浸って公式サイトとか改めて見ていて、ヤマザキマリさんのブログを読んでいて映画を見ている時には流れなかった涙が、流れた。

基本的に、映画でも文学でもドキュメンタリーでも、被害者的立場を強調した捉え方の戦争作品は好きではありません。
しかしこの作品では、珍しく、戦争とは人間という生き物が何世紀も懲りずに繰り返し起こしてきた現象だという事以外の、例えば政治的な思惑に捕われることもほとんどありませんでした。

戦争。そして、そんな境遇の中でも、何が起ろうと、いつも通りに生きようとしていた人達の話。

ふだん動かす事のない、動かす必然にも迫られない、だけど我々全員の胸の奥底にある、人としてとてもとても大事な機能に大きくはたらきかけてくる「この世界の片隅に」。
できるだけ多くの方達に見てほしいと、本気で心底から感じた作品です。

以下の画像は「この世界の片隅に」公式サイトから転載。

「この世界の片隅に」公式サイト