冷温停止と冷温停止状態


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 先日、文科省の原子力損害賠償紛争審査会は図の赤線から下の地域の人たちには賠償金を支払うとする指針をまとめた。赤線から下の地域で暮らしていた人には原発事故による精神的苦痛があった事を認めたのだ。そして赤線から上の人については全く言及が無かった。原発の影響も精神的苦痛も無かったとでも言うように。これは国によるブラック・ジョークとしか思えない。全然笑えない。
 宮城県知事は発災当初から一貫して宮城県に放射能被害は無いという立場だった。(そのせいで汚染された稲わらの問題も起こった)その事も露骨に出ている。放射性物質が入り組んだ県境を認識して宮城県には入らないようにしたとでもいうのか。
 こうなることを心配して僕らがずっと合い言葉にしてきたのは

宮城県南部は福島県北部と接しています。
放射能汚染に県境はありません。


という言葉だった。そしてこの現実。虚しい。赤線の下か上かそれだけでこんなに違うのだ。
 子どもたちの健康調査も図の赤線の上か下かで絶望的なくらいに違う。
赤線から下(福島県)では18歳以下の子どもたち36万人全員の甲状腺検査を生涯にわたって行う。
赤線から上(宮城県)は丸森町の2地区の小学生以下83人の甲状腺検査を一回だけ行うのみ。
12/13の記者会見でも
何となく不安だからということだけを理由に税金を使って健康調査はできないです。
と明言した。
 この国の政治家や宮城県知事は放射能が県境で止まると思っているらしい。
(この図は僕の住んでいる角田市とキャンプの拠点だった愛しい飯舘村の色を少し変えて作成しました)
 そして今日、野田首相は事故を起こした福島第1原発の原子炉が安定した「冷温停止状態」が実現し、事故収束に向けた工程表「ステップ2」が完了したと記者会見した。原子力発電に「冷温停止」という言葉はあるけれど「冷温停止状態」という言葉は無かった。「冷温停止」した「状態」では無いけれど年内に「ステップ2」の完了を目指す、と言った手前、安定した状態になったということにしたいからか「冷温停止状態」なんて新しい言葉まで作った。僕には捏造としか思えない。炉心融解してる時点で「冷温停止」はありえない。せめて今日の発表が「冷温停止状態」ではなくて「冷温停止」だったらどれだけましだったか。
 それでもまたこの新しい言葉を多くの人は受け入れるのだろうか・悲
 だけど海外では「言葉通り」には受け入れていない。当たり前だ。例えば”The New York Times” は大いに疑問というヘッドラインを掲げていた。

Japan May Declare Control of Reactors, Over Serious Doubts

【2011/12/19:追記】
 NHKを始めとする大手テレビ・新聞は原発事故発足以来ずっと国と共に安全デマを流し続けている。この野田首相の記者会見もごまかしと欺瞞だらけの会見だったがメディアもそのごまかしに相変わらず加担している。NHKがスタジオに切り替えた後の会見を貼っておく。