カミさんのコンサート

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 カミさんも企画運営に参加している地元のコンサートがある。健康福祉センター(ウェルパーク)で月に一度お昼休みにコミュニティモールで歌やオカリナやハープやいろんなコンサートをするというもの。今年は4月にカミさんが歌を歌う事になっていた。
 だけど3月11日に東日本大震災があった。会場には大地震で避難している方もいる。カミさんはやめた方がいいか、延期すべきかずいぶん悩んでいた。歌なんて歌っている場合かっていうのは当然考えたようだ。この方のような思いも僕は理解できるし僕だって原発の問題では(東北の住人でない)みんなはそうは言っても被曝の心配もないし半分人ごとだと思ってるでしょと思ってしまう時もあるし。そもそも、カミさんもピアノの方も落ち着いて練習を出来る状態じゃ無かった。
 いろいろ考えてカミさんは結局「決行」することにした。
 今日の曲目。

  1. 青い眼のお人形
  2. 電子ピアノ独奏 ありがとう
  3. うぐいす
  4. みんなで歌いましょう
      ふるさと
      めだかの学校
  5. カッチーニのアベマリア
  6. 電子ピアノ独奏 幻想曲 さくらさくら
  7. 小さな空

 椅子に座って聞いている方の数はいつもよりは少なかった。(それどころじゃない)会場は避難場所になっているので避難している方もいるし被災者への支援のため、タオルや着物を袋に詰めて持参される方もいていつもより雑然としていたけど、こんな状況だ、雑音も生きるための音。あるのが当然。静かにしろなんて(普段は思うけど)全然思わなかった。そこに混ぜてもらう事が大事だと感じながら聞いていた。支援物資を持ってきた方が思わず足を止めて聞いていたり、ボランティアの方がお昼休みだからとエプロンしたまま聞いてくれているのに感謝した。
 6曲目の歌を歌う前にカミさんが少しお話。
「お祈りの、聖母マリアに祈る曲なんですが私は、18年前に東京から角田に来たのですが今まで5回引っ越しをしたんですね。それで一番長く暮らしているところが角田になりましたが大切な場所である角田、そして東北が1日も早く穏やかな平和な日常が戻ってくる事をお祈りして歌いたいと思います」と言って歌い始めたカッチーニのアヴェ・マリアを聞いていて泣きそうになった。そんな自分に動揺した。そんな事は初めての事だったから。そして8曲目の「小さな空」を聞いて涙がこみ上げてきた。(わざわざ来てくれたお友達も「小さな空」が良かったぁと言ってくれた)
 結婚してからいろんな場面で歌うカミさんを見てきて、その中でも今日はとても良かった。もっと立派な会場やいろいろなところでいろいろな場面で歌うところを見てきたけど今日の雑然とした会場でのカミさんの歌声で僕は、いや僕がとても勇気づけられていた。身内のカミさんをほめるだけでオチのないエントリーでごめんなさい。だけど僕はカミさん(とピアノ演奏の方のふたり)が今日のコンサートを決行してくれて良かった。えらいなぁと思った。
 いずれにせよ今のような状況の時、音楽の力は強い。感情に直接訴える力があるのだろう。抽象彫刻とは違う。音楽は消えてしまうけど強い。
 コンサートの後、カミさんに「今まで聞いた中でも今日の歌はとても良かったよ」と言うと「何故か落ち着いてできた。震災の日までレッスンをしたいただいた先生のおかげもきっとある。」とカミさん。いろんな事があっても学生時代からずっとやり続けてきたことこそが一番大切な事だったのかもしれない。ご苦労様でした、カミさん。
 ”カッチーニのアヴェ・マリア”に興味を持った方のために動画を貼っておきます。あ、これ僕のカミさんではありませんのでお間違いなく(笑)Katherine Jenkins という方です。でもカミさんの歌はいつものように僕がXactiで撮影してDVDに編集しておいたので、カミさんの友だちなあなたは見たければ我が家に遊びに来てカミさんにリクエストしてください。全曲撮ってあります。
 

 
 それから「小さな空」が収録されているアルバムはこれ。この「翼 武満徹ポップ・ソングス」というアルバムは相当聞き込んだ。生涯10枚のアルバムを選べ(というのは絶対無理だけど、どうしても選べ)と言われたら入る可能性大なアルバム。全曲、武満徹の作曲、石川セリの歌。そして歌詞の多くも武満徹が手がけている。間違いなく天才だ。小さな空も作詞作曲を手がけている。(リンク先でほんの少し試聴できます)