菅谷昭氏（現松本市長）の講演会 -原発事故にともなう健康被害の長期的課題-が開催された。

国や原発推進している人に言わせると、原発事故で撒き散らされた放射能は福島県と宮城県の県境で止まるようで、宮城県知事も事故直後に「宮城県に放射能被害は無い」と言った。そんな宮城県や各市町村で行政側が開いた講演会で語られたのは放射能の被害より煙草の害の方がひどい、というそれこそ「ひどい」話ばかりだった。実際にチェルノブイリ原発事故後のベラルーシに滞在して、医療支援活動を実際に行ってきて、現場の実際を知っている（医師でもある）菅谷氏の話を一度聞いてみたいという声は、僕らの住む宮城県南部でも少なくなかった。日頃、放射能の問題で共に活動している仲間達が、長い期間にわたって地道に準備を進め、多忙な菅谷さんにも引き受けていただいて今日の、この会が実現した。
僕らが市に菅谷氏の講演会を要望したら無理と言われたけど、実現した。（できないと言われた理由も信じていない）

何かあったときに「この指とまれ」と集まってひとつのことをやりとげてしまう宮城県南部の仲間たちが、今回も日曜日の早朝から奉仕の精神で準備を進めてるのを頼もしく眺めながら、僕も自分に割り当てられた、今日の講演会をビデオに収めるという仕事の準備をしていた。

今日のスタッフの人たちは、原発事故の後の、情報の無い、錯綜した、混乱した、暗闇のような中で、出会ってきた人たちだ。あれからずいぶん長い時間が経ったような気もする。

菅谷昭氏の講演会から、少し自分のメモを。（菅谷氏の本意を受け取れていない文章がある場合の文責は僕にあります）

• 国のヒアリングに呼ばれて、今の取り組みでは問題があるという提言をしたが、報告書では無視されていた
• 海外に行くと、こう言われる「日本は原爆で大変だったが、今は日本が空・海・山を放射能で汚している。しかも再稼働までしようとするなんて」
• 現在、福島の医者たちは、子ども達の健康の状況には放射能の影響は無い。と言い切っているが「わからない」とい言うべきではないか
• 安倍首相は福島に寄り添うと言いながら子どもに金をつかわない
• 被災者に寄り添うとか、福島の復興無くして日本の復興は無いと、口では言うが（効果のある）金は出さない
• ベラルーシ ゴメリ州では汚染地域の6〜17才の子どもの国による年2回の定期検診と、毎年1回の保養を国家負担（国の金）で行っている
• これは国難。子ども達を守る努力は最大限にするべき
• 25年先行するチェルノブイリをもっと参考にするべき
• 甲状腺の水のたまったのう胞は、ガンにはならない。肉の塊-結節はガンになる可能性がある
• 実際にチェルノブイリでも、鼻血は症例に含まれていたが、それが放射能によるものかどうか特定できないので今回の鼻血問題はコメントできない
• 日本人が今かかっている病気は「難治性悪性反復性健忘症」

誰かに頼まれた訳じゃないけど、「非」公式カメラマンとして、後でみんなに見せてあげようと今日のみんなを、あちこちで撮っていた。カメラを構えてファインダー越しに見ていたら、菅谷さんにも、なんかぐいぐい迫って行ってしまった。これは公演後のさようならのショット。全然偉ぶるところのない、同じ目線から考えようという姿勢が伝わる話だったから、思わずスタッフのみんなが、ありがとうございましたの気持ちを込めて、さようならの手を振ったところに応えてくれたところ。

もし菅谷さんが宮城県南部のどこかの市長だったら、どうなっていたんだろう、という、考えても仕方のないことを思った。
原発事故があろうと、放射能があろうと、国は問題が無いと言い、県は国が問題は無いと言っていると言い、市は県が問題無いと言っている、と言った。全部人のせいにして僕らの要望には応えなかった。人ごと。折しも仙台市では第3回目の国連防災世界会議が開かれ、世界中からのお客様をお迎えしている。宮城県南部の市町村長らも、その仙台に行っているけど、それより前に足元の現実を見た方が良いのではないか。そこには、防災の必要のある汚染された土があるよ。

いまだに事故を起こした原発は収束せず、放射能汚染水が海洋にいくら出ようとも「アンダーコントロール」と言えるような裸の王様以外に、この国の政治を治められる人はいないのだろうか。オリンピックで「おもてなし」するために、資材も人材も東京に集め、そのために、さらに復興は遅れ、原発被害者の苦しみは大きくなっているのに、「オリンピックは福島の復興のためだ」と言える程、羞恥心の無い人しか、この国の政治は治められないのだろうか。もしかしたら、羞恥心が無いないのではなくて本当に、オリンピックが原発事故後の東北の復興のために、なっているとでも思っているのだろうか？本当に放射能汚染水がアンダーコントロールだと信じているのだろうか？