Love and Peace

大震災と原発事故の後のこの国を見て最近「Love and Peace」という言葉のメッセージの力を改めて受け止めている。坂を転がるようにひどくなっていくこの国で、この言葉の持つ意味は大きいと感じている。ちょっとひねくれて生きてきた昔の自分が見たら驚くだろうけど、今、シンプルに石にこの言葉を刻んで作品にしている。石に文字を彫り込んで金ラメに着色したり、字を浮き彫りにしただけで作品として成立しているかどうかは意見もあるだろうけど。

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制作しているときは幸せなんでしょう?とよく言われる。ギリギリの生活の中でも制作できていることや作品が完成した一瞬だけ、それを感じることはたまにあるけど、制作の真只中にそれを感じる事は僕は無い。逆に怒りとかネガティヴな感情に包まれている事がほとんど。

でも今回、石から「LOVE & PEACE」という文字を浮かび上がるようにノミだけで彫り進めていた時、初めて最初から最後まで幸せな気持ちに包まれていた。電動工具を使わず、石の粉を吸わないようにするマスクも、目を守るゴーグルも、騒音から耳を守る耳栓もしないで彫っていた事も大きいかもしれない。まるで自分の心の中にある気持ちを少しずつ彫り出しているようだった。思いが少しずつ目に見える形になっていくのを見ているようだった。だから、この作品を「LOVE & Peace の発掘」と名付けた。

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作品に込めた、というかこもってしまった思いや、言葉の力、他の彫刻作品のように展示台の上に「飾る」事が不自然に感じて、この作品だけ地べた(床)に置いた事、それが自然と思えた気持ちまで丸ごと共有して受け止めていただいてしまって「俺、アートなんて縁がないし、わかんないよ」と言っていた(という事を後で聞いた)方のところにマンホールくらいの大きさで重い「LOVE & Peace の発掘」は貰われて行く事になった。この作品を見た日の夜には手元に置くことに決めた事を、個展最終日にランチを食べながら知って腕には鳥肌が立っていた。幸せな気持ちに包まれた。

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作品は時に、一言で言えない気持ちや言葉にできない思いを、丸ごとそのまま共有してしまう「装置」になる。


山中 環 作品展 BORDER and SPIRAL

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http://www.tamaky.com/works/stone/2016/04/06/border-and-spiral/

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