軽やかなダンスのためのすきま

111006
 午後、仙台へ。雨の降っていない明るい空に半径の長い虹が輝いていた。
 今日、いつも近くに飾って眺めて暮らしてきた作品が手元を離れていった。
 なんだかいろんなことが苦しかった30代。カミさんとの関係も少しずつ積み上げてはまた崩れという事を繰り返していたような気がする。そんな頃に「ふたり」の関係を考えて作っていた彫刻のシリーズ「軽やかなダンスのためのすきま」
 強く抱きしめあっていると恋愛の時はいいけれど、人生というダンスを前を向いて共に歩んでいくことができない。だからといってそれぞれが勝手に生きていくのならふたりで生きていく意味が無い。協調してふたりの生活を形作りながらもお互いがそれぞれのダンスを踊るためにはふたりの間にすき間が必要。空疎ではない親密なすき間が。その距離感を探していた。(それは今も)お互いが親密なすき間を保ちながら全体としてバランスのとれた形は可能なのだろうか。
 僕が作った中では「僕」と「カミさん」以外にも好きだと言ってくれる人が多い作品だった。だけどこの作品だけは一生、手元に置いておくつもりだった。
 大きな心境の変化は原発事故にあると思う。原発事故の前と後で僕は完全に違う人になってしまった。リセットではないけど一番、自分にとって大切な作品こそ手放すことも必要なのでは?という気になった。そんな小さな「勇気」がこれからの生活に必要なのではないかと。
 午後、作品を持って仙台の建築事務所を訪ねた。今手がけている新築の家の玄関の正面に作品を置く場所を作ってくれて、照明も組み込んだその舞台に作品を置いてお客様に引き渡すのだという。個人的にも付き合いのある大切なお客様の家だから何か良い物をプレゼントしたいと思っていたと。現場にも連れていってくれて設置場所や作品を置く空間など全て僕の言う通りにしていただいた。大切な作品を買ってくれた人がこの人で良かった、と思った。小さな「勇気」が幸せをくれた。
 小さな喪失感も味わっている。だけどきっとこの気持も新しい作品を作るのに必要だ。
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 幸せな気持ちを抱えて仙台の街中にある天空のカフェ「ヴィトリーヌ」へ。イチョウ並木や街灯にとまる鳩を見下ろしながら珈琲を飲む。 
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 石の一輪挿しや作品のポストカードを置いていただいている。螺旋の一輪挿しをスリットのある一輪挿しに交換して飾っていただく事にした。


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軽やかなダンスのためのすきま VI(6)

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