知らないふりの罪

原発の危険性が分かっていながら知らんぷりする。
この罪は、直接関わっている人以上に重い罪。

子ども福島代表の佐藤 幸子さんから、娘さんの文章が紹介されています。
僕は直接の知り合いではありませんが有機農法のお百姓さんの友だちが多いので佐藤さんを知っている方もいて間接的に時々、その言葉などにふれることがあります。放射能事故の後、子ども達の未来を守るために行動されている時の「本気」の姿は、YouTubeからも直接胸に響いて来ました。そんな姿に勇気づけられました。

長くなりますが、最後まで読んでください。

震災当時、13歳だった次女は、今年山形の全寮制の高校に進学しました。中学2年生の時は、山形市、米沢市と避難生活で不登校となり苦悩の毎日を過ごしていたに違いありません。

私は、そんな娘の気持ちを顧みず、ただひたすら放射能から子どもたちを守る活動に明け暮れていました。
ある日、知人が偶然にも娘のブログを見つけ「本名は書いていないが、内容からして幸子さんの娘さんに違いない」と教えてくれました。
そこに書かれていた娘の気持ちは、「自分は学校に行くことも出来ない。親はほとんど子どもを守る活動で、家にいない」こんな生活が娘を追い詰めていることが書かれていました。知人からは「娘さんがこんなに苦しんでいるのに、それでも、活動を続けるのですか?」と問われました。親として震災後とった行動を後悔しなければならない内容でした。

そのブログから、2年後の今年9月に、娘は学校で全校生の前で、自分の気持ちを発表しました。「原発の危険性が分かっていながら知らんぷりする。この罪は、直接関わっている人以上に重い罪」「私の罪は2世、3世を守ることで償う」そのために「今の自分が健康でなければならない」そして「この苦しみ、痛さは消しちゃだめだな」と。
話した内容を、娘は手紙に書いて私に送ってくれました。この手紙を読んだ時、涙が溢れて来ました。震災後の悲しみ、苦しみ、絶望の気持ちを乗り越えて逞しく生きて行こうとようやく決心した娘の成長に、これまでやってきた活動の苦しさが癒されました。と同時に娘の気持ちは、福島の子どもたちの気持ちを代弁しているとも思いました。

私はこの手紙を多くの人に読んでもらいたいと思い、娘に了解を得て知人にメールしました。娘は、読んだ人の感想を聞きたいと言います。この手紙を出来るだけ皆さんで拡散してください。そして、感想を寄せてください。

娘は12月25日、クリスマスの夜家族に見守られて自宅で生まれました。今年の16歳の誕生日プレゼントに皆さんからの感想を渡したいと思います。

美菜から皆さんへ

私は名前も知らない人に泣きながらあやまられました。
「私たちのせいで関係のないあなたたち福島の子供が苦しむことになってごめんなさい」
と。私はなにも声をかけることができませんでした。

つらくなかったと言えば嘘になります。
福島に残ると言えば悲しい顔をされます。
私は母のそんな顔を見たくありません。

福島に残るとことは将来、病気になる確率が高くなり、
結婚して子供を産むことに抵抗を覚え、子供を産めばその子供が苦しむかも知れない。
自分のせいで。
なら産まなければよかったと子供に対して罪悪感と後悔にさいなまれるかもしれません。
100%とは言えませんが、少なくとも確率は高くなります。

この原因は3.11からの原発事故、そして放射能もれ。

普段の生活で忘れることが多いです。
忘れて笑顔になって楽しい時間が過ごせます。
でも「原発」や「放射能」「被災」などの言葉を聞くと
どうしても笑顔を保つことができません。
頭が痛くなります。胸がくるしくなります。

3.11まで原発がどこにあるのかさえ知らなかった私、
でも母はチェルノブイリの事故があった時から、
福島の原発もいつか事故かなにか起きてしまうと予想していたそうです。
その時、真っ先に山形の知り合いの家にひなんさせようと考えていたらしいです。
実際、爆発して次の日には山形に来ていました。
テレビなどではよく「2.3日で帰れると思っていたのにいつになったら帰れるんだろう」
という言葉も聞きましたが全く同じです。
でも、原発が爆発したとニュースを聞いたあと外にでた時、寒気がし、鳥肌が立ちました。
このときからうすうす気づいていたのかもしれません。
もう元の福島はないと。

私は思うんです。原発の危険性が分かっていながら知らんぷりをする。
この罪は直接関わっている人と同じくらい、もしくはそれ以上の重い罪だと思います。
私もそうです。危険だと知りながら逃げて、私を福島から離した母をにくみ
今が楽しければ未来が真っ暗でもいい。
そんな逃げるような考えをしていた私を、私は絶対に許しません。許せないんです。
この罪を忘れてはいけないと自分に言い聞かせます。
罪を背負っていかなければいけません。

でもこれでいいんです。
いつ病気になるか分からない。産んだ子が健康な子どもじゃないかもしれない。
私は、そういうプレッシャーがなければ行動できません。
本当はプレッシャーがなくてもやるべきことをやらなければいけないんですが、
少したよらさせてください。

やるべきことは、福島に残って福島を県民として守ることではありません。
私は自分の健康を守ります。
そして次の命が幸せになるように、その次の命も産まれて健康であるために
今の私が健康でなければいけません。
何の罪もない命を苦しませることはやりたくありません。
私の罪は、2世、3世を守ることによってつぐないます。
でないと、私が自然農の娘の意味がありません。
そして、福島を支えて戦ってくださっている方たちを一生敬い、感謝します。

でもこれは私だけの問題ではないです。世界の問題だと思います。
今、放射能はもれつづけています。海にも流れています。
少しだからなんて、見えないからだなんて絶対に思ってはいけないんです。
それほど危険なんです。
今、日本の技術で原発を作れるようになりました。
私たちのせいで他国にも危険をさらすなんて、今の私にはどうしたらいいか分かりません。
私は今の所、学園でのなやみごとと言えばこれ以外ありません。
書きたいことがこれ以外ありません。
なやみごとが少なくていいなと自分でも思います。
なかなかスッキリしませんが、、、
本当はこんなことを書けば同情してくれと言っているように聞こえるかもしれません。
でも、かわいそうって思うなら、まず、今の現状を知ってもらいたいです。

話は少し変わって、最近「結婚したい、子供がほしい」という話をしました。
私はその場から逃げ出したかったです。
それから今野先生の夕拝の話、将来の子供たちや、母のことを考えて泣きたくなりました。
私の明るい未来があったとしても、2世、3世の明るい未来が見えなくて、
この話をしたくても、私は言葉にするのがニガテです。
それでも未来の子供があぶないということは知ってほしいです。

ここで、みなさんが聞いてくれるだけでありがたいです。
この苦しみを痛さは消しちゃだめなものだなと最近感じています。

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