誰も知らない

「誰も知らない」是枝裕和監督を観た。
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ワンダフルライフを観た時にも感じたけれどドキュメンタリーなのかセリフなのかわからない、是枝監督独特の演出手法はさらに冴えて耳元で吐かれている生な言葉として感情を掴まれる。
映像は淡々と日々の生活を写していく。15年もの間、テーマを持ち続けたからこそ、力んでしまいそうな社会的なメッセージを含んでいるにもかかわらず大げさにすることなく、ただもう本当に淡々と切り取られてゆく子どもたちの日々。
華氏911のように明確な意図を持ったメッセージを声高に叫ぶことは無い。だからこそ逆に、子どもたち4人で買い物をしたり、公園で遊ぶ、というどこにでもありそうな子どもたちの「日常」が、どれだけ価値があるのかを思い知らされて涙をこらえることができなかった。僕の頭の中ではまだ、子どもたちが笑いながら公園の回転遊具を回し続け、心がかきむしられる。
是枝監督にしかない手法で是枝監督の作り上げたこの映画は、どの場面の子どもの顔も、どの場面の子どもの言葉も、もうそれは奇跡。
そして。モチーフは10数年前の実際にあったことだとしても、この映画のような子どもは今まさにこの時代のこの日本に数多くいるはずだ。大人を責めていた自分はすでに大人。もっと、ちゃんとやらなくちゃ、自分に出来ることを。