アウトレイジ



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 北野武監督最新作「アウトレイジ」を観た。
 息を吐く余裕もないような濃密な時間で積み上げられた物語。過剰に演出しない淡々とした鈴木慶一の音楽も映像に合っていた。それにしても無駄なカットが無いな。
 世の中は「理不尽」だらけだ。だけど理不尽な振る舞いをする他人のせいで自分の希望や主張が通らないなんて言うようなナイーブな人間でもないし自分の「気持ち」が「理不尽」な振る舞いに負けているなんて言い訳できるような年でもない。理不尽は世の中にあふれている。だけど本人にその自覚があって理不尽な振る舞いをしている事は意外と少ないのかもしれない。そんなつもりはなくても、力がなかったり、焦っていたり、自分の事を一番に考えて行動したことが他人にとって「理不尽」な事になっているだけなのかもしれない。自分だってきっと他人から見たら理不尽な事いっぱいやってるはずだ。まあ最近、ホントに理不尽な事が多いんだよ。


 そしてこの映画は意識的に「理不尽」な事をやっている人間がたくさん出てくる。ようするに他人に「理不尽」な事をしたとしても人生が一番大事な人だ。でもそれは裏返せばそれだけ自分の人生を生きることに執着してるとも言える。
 世界にも認められ60を過ぎた「北野」監督が単純に生きることに執着した男達を描くだけの映画を作ったというのもすごい。そして暴力がきちんと正しく「痛い」映画だ。これは女性は観ないだろうなぁ。でも興行的に失敗して次回作を撮るまでの間隔が長くならないことを願います。
 それにしても三浦友和って良い俳優だなぁって書こうと思って他の出演者の誰にでも置き換えられるじゃんと思い直した。現場の空気か撮影手法のせいかみんな普段以上の緊迫した良い感じがみなぎっている。加瀬亮は「それでも僕はやってない」と同一人物なんて思えない。
 ずっと「たけし」を世界に押していた評論家の中にも酷評している人が多いし女性には受けないだろう。でも何でなのかうまく説明できないけど僕には良い映画だった。まぁビートたけしが初めて出したアイドル本のような子供だまし本も持ってるし初めてのコンサートにも行ったし未だにずっと追いかけている人の映画だからな。