コールラビ

 僕には食べた瞬間に「美味しい!」か「まずい」を(無意識に)声に出して言ってしまう悪いクセがある。(そのお陰で仲良くなった料理人もいるけど)意識以前に言ってしまうので本人のコントロールが難しい。
 1年くらい前にご飯を食べて「まずい!」 と気がついたら口にしていた。
 カミさんが言った。
「美味しいとか、まずいとか、今そういう世界に生きていない。食べられるものをありがたくいただいて生きていく、今はそういう時代」
カミさんは原発事故事故による放射能被害のリスクを少しでも避けるために、食材を必死に選んで手に入れる努力を続け、その中で出来るだけ幸せな食卓を用意する努力をしてくれていたのに。
それ以来、さすがの僕も不用意に「おいしい」「まずい」を口にしないようになった。安心してご飯が食べられるだけで本当に「ありがたい」。
 縁があってネットで知り合い、交流を続けていた方がいる。かわうそ亭というHNのその方は本の素晴らしい読み手で、勝手に読書の水先案内人としてブログをフォローし、紹介された本を何冊も読んで知らない世界を広げていただいた。いしいしんじとか。僕が大きく心を動かされる事があってブログにエントリーした時にも、いただいたコメントにいつも励まされた。(たとえばこれとかこれ。)
 最近、仕事をやめて農業を始められた。お願いして送っていただいた野菜がお昼前に届き、生まれて初めてコールラビを食べた。
 去年まで家庭菜園をずっとやっていたけどコールラビは何度か挑戦しても収穫できなかった。
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 たっぷりめのオリーブオイルにニンニクの香りを移し、スライスしたコールラビをソテー。岩塩と胡椒を降って昼にいただいた。
 一口食べて、大切に育てられた新鮮な野菜の持つ本来の力に思わず「美味しい!」と言ってしまいちょっと焦った。
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 でも。カミさんも思わず「美味しい!」と。生まれて初めて食べたコールラビはとても美味しかった。
原発事故前は家庭菜園でいろんな野菜を作っていた。これからの季節はアスパラガスだった。毎朝1本か2本でるアスパラガスを朝の犬の散歩の時にポキっと折ってすぐにソテー。茹でるより濃厚で美味しかったなぁ。夏のトウモロコシや枝豆はお湯を沸かしてから収穫して即、茹でたものだ。
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 ネットではコールラビはバターソテーのレシピが多かったので夕食はそうしてみたけど、圧倒的に昼に勝手に考えて料理したニンニクの香りを移したたっぷりめのオリーブオイルでソテーした方が美味しかった。
 送っていただいた大根の葉っぱの炒め物、甘い大根、久しぶりにカミさんと新鮮な野菜が持っている美味しさを話しながらの楽しい食卓だった。
 原発は、新鮮な野菜を自分で育てて食べる。というささやかな、毎日の、当たり前の、幸せを奪った。
 自分が暮らしている、自分の畑で作ったものを、食べられない、という生活は一体何なのだ。
 大飯原発は安全。自分をどじょうとよぶ人が責任をとるから再稼働するのだという。
(僕は、その「安全」を全く信用していません)