希望の国

「希望の国」(園子音監督)を観た。

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当事者であり、まだ渦中なんだと感じた。
嗚咽をこらえながら見るシーンがいくつもあった。
だから、今は感想や思いを書く余裕がない。
この映画を観た後、カミさんにメールしてきた友だちの思いが、今の僕の等身大の気持ちを表している。

「園子温監督の希望の国観ました。いっぱい泣きました。でもあの作品を作ってくれたことに感謝しました」

(ごめんなさい、勝手に転載して。でも深く共感しました)

観たい、と思ってから3ヶ月もかかったけど観ることが出来てよかった。

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第183通常国会での安倍首相の所信表明演説(2013/01/28)を読んだ。
この国を原発事故で真っ二つにして、放射能で大地を汚した、この状況に対する大きな責任のある自民党の党首でもある首相の、所信表明演説に「原発事故」「放射能」という言葉は無かった。
この国の首相も目をそらしてる。
全力で無いことにしている。

この人たちや国に期待しても希望は無い。

「希望」があるとしたら「絶望」したその後に、自分で歩き出すその未来にだけだろう。

見終わって「希望」に満ち溢れるわけではない。
政治は放射能を無いことにしようとしている。
現実を見てもどこに希望があるのか。
それでも。
この映画のタイトルに「希望」という言葉がある意味は大きい。
今を生きるにはそれしか無い、のかもしれない。
個人的にも放射能を撒き散らされた後、シンプルに「命」に「希望」を託すような作品を作るようになった。
この国に希望があることを脳天気に疑わずにすんだ、放射能を振り撒かれる以前の時代だったらシニカルな僕には考えられない。

以下は、朝日新聞(2013年01月31日)からの転載です。

(核なき世界へ)悪夢から逃げられない

映画監督の園子温さん=東京都渋谷区、西田裕樹撮影

映画監督の園子温さん=東京都渋谷区、西田裕樹撮影

■被爆国から2013:2(映画監督・園子温さん)
【聞き手・木村司】東日本大震災から数年後の日本で、原発事故がおこる。場所は、長崎と広島、福島の地名を重ねた架空の長島県。それが映画「希望の国」です。前代未聞の事態を過去にさせるものか。そんな思いから福島で取材し、制作しましたが、放射能という目に見えないものを映画にすることで、今まで見えていなかった日本という国が見えてきました。
制作前に「次は園さんとやりたい」と言っていた映画会社がたくさんあったのですが、原発の映画というと、クモの子を散らすように消えてしまった。人びとを苦しめている現在進行形の問題を映画にするのが、こんなにも難しい国だとは思ってもいませんでした。
制作中も、福島がどんどん忘れ去られていくのを実感しました。その福島を通して、原爆もこうだったんだと気づかされました。日本はたった一つの被爆国で、核について最も考えなければいけなかった国。でも、広島、長崎という悪夢から目をそらし、すぐに目を覚ました。後ずさりすれば逃げ切れると思っていたら、原発が爆発した。
「第2次大戦で日本と戦った国は?」。そんなクイズに「米国は友だちだからありえないなあ」と20代のタレントがつぶやくのを先日テレビで見ました。それくらい忘れた日本って何なのか。この国の流れのままに生きていたら、そういう無関心になる。ぼくも、そのムードに感染して、震災前までは核に対して無関心だったんです。
「希望の国」の後も、福島での撮影をつづけています。いずれ、リアルな原爆の映画を作りたい。残酷すぎて怒られるくらいの。このままでは、本当に忘れ去られてしまう。みんなが目を覚まそうとしているなら悪夢にもう一回、引き戻す。そんなやり方を映画でやっていくつもりです。

その・しおん 1961年、愛知県生まれ。映画監督。性や暴力の描写がきわだつ「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」など多くの作品が国内外で高い評価を受ける。東日本大震災の被災地を映し込んだ「ヒミズ」は、ベネチア国際映画祭で主演2人が新人賞。

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「The Future Times」のインタビューも読み応えがありました。
覚悟と未来 / 園子温

(園子音監督のインタビューに興味を持たれたら、以前のエントリーでもまとめたものがあります。こちら

※写真はfacebookページ「映画『希望の国』 最新情報」から。