野火

映画「野火」を観た。
仙台フォーラム塚本晋也監督トーク付の先行上映で。(以下ネタバレありません)

15082003

第二次世界大戦フィリピン戦線を日本軍が生きるか死ぬか(ほとんどが死んでいくのだけど)の状態で彷徨う中、ひとりの兵士の姿を追い続ける映画。
原作は大岡昇平の小説。それを塚本晋也監督が高校生の時に読んで、いつか映画にしたいと想いながらも、これまで実現することが出来なかった。それは予算が膨大になることが一番のハードルだったのだけど、数年前からこの映画の実現を相談すると、今、この時期にそんな映画を作るのはどうか、という反応や自粛ムード、圧力を感じるようになったという。この国で、再び戦争にむけた動きが起こっている中、今作らなければもうこの先作るチャンスはないかもしれない、作りたいものが作れなくなるのは困る、と完成させたという。
この映画の主人公は塚本晋也監督自身が勤めている。本当は誰もが知る有名な俳優を主人公にしたかったが、そうすると海外ロケも含めスタッフ・キャストの予算が膨大になるのでその方法での実現は困難。そのため三脚にカメラを載せて全編自撮りなら基本ひとりで作れる。もしくはアニメ。そこまで考えたそうだ。だから自分が主人公になるのは苦渋の選択だったと。

血しぶきが飛び、内臓や脳みそまでグチャッと飛び踏み潰される映画を、見ようかどうしようか迷っていたけど、塚本晋也監督に会って話を聞きたい気持ちの方が勝って見に行った。実は映画を見ている間は本当に気持ちが悪くなって吐き気までしてきたんだけど(それが戦争だ!)上映直後に、今まで感情移入していた兵士の顔の人が出てきて話を始めて気持ちが落ち着いてきた。静かに話す監督の話からは、どんな細部までも緻密に計算し考えぬいていたかが伝わって来た。

この映画は「配給」まで御自身でやっているので、上映を真っ先に決めてくれた映画館にはこうやって実際に出向いて話をしているのだそうだけど、「10日分くらいの」芋(のオブジェ)が小さなバスケットに入れてテーブルに置かれていて、監督が「いろんなところで話していますが、このギャグは始めてです」(見てない人は伝わらない話でゴメン)と観客と一緒に笑っていた。そんなセンスが光るフォーラムの方が、とても上手にトークショーを進めていて、監督へのリスペクトと映画への愛情も伝わってくる良いトークショーでした。映画だけじゃなくてトークショー付きのを見られて個人的には本当に良かった。(聞いてるうちに吐気は無くなった)

フォーラムの方が薦めていたシネマトゥデイでの連載「『野火』への道」は本当にとてもオススメです。

この映画、是非見て欲しいんだけど、新旧話題作、渋い映画などコンスタントにたくさんの映画を見続けている父親に、最近おすすめの映画を教えてもらうことが多い。その親父からのメール。

今日は野火の初日上映を見た。
余りにも凄惨で必ずしもお勧め出来ない。

僕の感想も同じ。でも見て欲しい。
精神が弱っているなら立て直してからの方が良いと思う。最後まで見切るのに精神力が必要と言うのは言い過ぎではないはず。
(仙台フォーラムは2015/9/5から)

※公式サイト

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