タイムスリップ

 イタリアに興味を持った女性が仙台で開かれていた週に1回のイタリア語講座に習いに行き、それだけではあきたらなくなって実際にイタリアへ行って語学学校に通うことにして日本を旅立った。
 持ち前の行動力で(まだほんの序の口のイタリア語で)無事面接をクリアし、入学を果たした。
 語学学校が休みに入ると、仲良くなったスウェーデン人の友だちに電車の切符を買ってもらい白夜を見に行くため海の近くのへんぴなユースホステルが1軒あるだけの所へひとりで旅行した。
 地の果てだーと思いながらユースホステルに行くとこんな所にまで日本人がいた。年配の夫婦。しかもバックパッカー(荷物をスーツケースではなくてリュックに担ぐ旅行スタイル)。「あら、こんな所にも日本人がいるなんて」と夫婦が気軽に話しかけてきたので誘われるまま一緒に夕食を食べた。
 お互いの写真を撮り、デジカメが流行る前のフィルムの頃だったので後で焼いたら送ります、とお互いの住所を交換。
 すると、東京から来た年配の夫婦は女性の住所を見て「あ、宮城なんですか?実はうちの息子は宮城へ越して彫刻を彫ってるんですよ。」
 「え、もしかして石のですか。知ってます。一緒に仙台でイタリア語を習ってました」
「えーーー!!!」
 この話のバックパッカーの夫婦は僕の両親。女性は僕が仙台にイタリア語を習いに行ってた時、一緒で友だちになった方。こんな事があるんだなぁ。
 女性は今や仙台でイタリア語を教え、イタリア語の絵本の翻訳コンクールで大賞を受賞し、夏には翻訳者として本が出版される。すごいな。そして僕はもう「こんにちは」と「ありがとう」と「また来週」(イタリア語講座の最後に必ずこのあいさつをしていた)くらいしかイタリア語を覚えていないよ・笑
 作品展に来てくれたので、15年ぶりに会って源吾茶屋でお茶した。
120531 イタリア語講座は先生が日本を去ることになり突然終わりを迎えた。最終回はイタリア語講座のマネージャーの方のマンションでお別れ飲み会が開かれた。ある人は帰りある人は寝てしまい、気がつくと空が白々するまでふたりで話し続けていた。僕は飲み過ぎでヘロヘロになっていたのに涼しい顔でおしゃべりしていた。そしてそのまま仕事に出かけていった。僕は駐車場の車の中で寝た。

 話ししてたらあっという間に15年前にタイムスリップ。