CAF.N展 搬出の日に

— 山中 環 (@tamaki) 2014, 10月 21

今日で「CAF.N展」は終了。搬出のために出かける。

Copyright (c) 赤松功「痕跡-'14 渋川-枝が伸びる」

Copyright (c) 赤松功「痕跡-’14 渋川-枝が伸びる」

午前中は僕の友人知人のお客さんはいらっしゃらなかったので、会場に来ていた作家の方たちとお話ししていた。この美術館の中に「風景」を持ち込んだような赤松さんの作品は会場で組み立てて高さを変えながら吊っていたけど、高さを少し変えるだけで表情が一変していた。普段は次の展示に向けてひたすら拾ってきた枝を剝いて磨いているんですよ、と笑っておられた。ライトで床に映し出された影も素敵でした。

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展示会場のすぐ近くで急いでひとりで薪釜のナポリピッツァのランチしてすぐ会場に戻る。(店名が知りたい方は画像クリック)

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展示会場の6階の上と下の階で気になる展示があったので急いで見る。

7階の【ラウンジ展示】3月12日はじまりのごはんーいつ、どこで、なにたべた?ー。大震災の翌日。多くの人が水を求めて並び、食料を求めて並んだ。あるものだけで食べて震災後の日々をスタートさせた。市民から寄せられた大震災の後の「食事」とそれにまつわる写真の展示。会場には色とりどりの付箋が置かれていて写真を見た人が「想い」を書いて貼れるようになっている。写真を見て共感し、寄せられた言葉を見て共感しながら、僕も大震災の後の食事を思い出していた。我が家はアウトドアキャンプをやるし、食料のストックもあったので特に困ることはなかった。それよりカミさんと(その頃は生きていた)愛犬小春とふたりと一匹の濃密な時間だったことを感傷的に思い出した。展示されていた写真に半ばあきらめの気持ちだったとしても笑顔が見られたのはせめてもの救いだった。

カミさんと愛犬小春との、僕の場合の「はじまりのごはんーいつ、どこで、なにたべた?ー」

141022115階の展示会、フォト・バイオグラフィー「道」は、初心会 杜のホスピタル・あおばブで日々の生活をされている、人生の最終局面にある人たちの可愛らしかった子ども時代、輝かしかった青年時代、仕事に、家事に、忙しく働いていた時代を職員の方が聞き取り、昔の写真と共に仙台在住の詩人・武田こうじさんが、患者様それぞれの人生を「詩」にまとめたものでした。いろいろな事をやる時に、人生の残り時間を意識する年代に入った自分にとっていろいろと考えさせられる展示でした。当たり前の事だけど、どんな人にも日々の暮らしがあって一生懸命生きている、というのを見せてもらった展示でした。1枚の写真だけなら、おじいちゃんやおばあちゃんでくくられるその人たちの生まれたときの写真ややんちゃな青春時代の古い白黒写真まで愛おしく思えてきた。今回、たまたま自分が参加させていただいた展覧会と同じ時に階下でやっていなかったら見る事は無かったと思うけど、とてもいい企画だし展示だと思って、会場を後にする際に芳名帳に名前を書いた。

Copyrigh(c) 作間 敏宏「治癒」

Copyrigh(c) 作間 敏宏「治癒」

今回の展覧会で同じゲスト出品だった作間 敏宏さんの「治癒」というインスタレーション。作者の故郷は大震災の津波で大きな被害を受けた。イチゴ作りが盛んで町内に無数のプレハブが建っていたけれどその多くが流された。暗幕の中に入って暗闇の中でこの作品をしばらく眺めていると遠近感がわからなくなって高台から遠くのプレハブを眺めているような気になったり急に小さなプレハブに見えたりした。自分が大震災を経験しているからかもしれないけれど、この作品はとても心に響いた。レセプションで作家から直接話を聞くことが出来たのは嬉しかった。

Copyright(c) Claire de Chavagnac-Brugnon 「Loquemeau(little breton harbor, France)」

Copyright(c) Claire de Chavagnac-Brugnon 「Loquemeau(little breton harbor, France)」

フランスから参加されたClaireさんの垂直水平で構成された作品もとても興味深かった。この青に塗られた平面の上にひかれた色鉛筆の線。「I like this sensitive lines.」と言うととにっこり笑ってiPadの中から昔の作品から現在までの作品をたくさん見せてくれた。同じような垂直と水平で構成された作品は配色も線の描き方も構成もいろいろは変遷を経て今に至っていた。思いつきではなく、淡々と続けていてどの年代の作品もそれぞれに興味深かった。僕の作品を面白いと思ってくれてこれを作ったのは誰ですか?と探してくれていたと教えられたけど、それは今回の僕の作品が垂直と水平で構成されていたからだと思う(笑)

Copyright(c) 吉田 佑子「循環」

Copyright(c) 吉田 佑子「循環」

時間になり、搬出開始。自分の作品を搬出した後、会場に戻ってこの写真のインスタレーションの片付けを手伝う。搬入の際に大量のロープが会場に運び込まれたのに作品は軽やかでそのギャップに驚いたし、アーティストトークの際に原発事故に触れ「放射能で汚染されている地域のものを人間は食べないけれど猿は(放射能の事はわからないから)食べていた。猿だって放射能の害を受けるのは人と同じなんだから猿だからいいって訳はない。人は自然に生かされているのにその根本を揺るがすものを作って言い訳がありません」というようなお話をされた。普通の事を話すように淡々とだけど毅然と。表現している人で正面から放射能の事を話すのを直接見たのは初めてかもしれない。とても共感してレセプションで絶対に話をさせていただこうと思って探したけど、今週末に又別の会場のインスタレーションが待っていて、搬入が終わった後、制作のために埼玉にとんぼ返りされて叶わなかった。御自身で搬出に来られていたので、搬出を手伝わせていただくという口実で作業の合間にお話を聞かせていただくことが出来た。

水が雨になり川になり姿を変えて循環していたり風が吹いたりしているような作品にも共感したし、アーティストトークの話にもとても共感したことを伝えることが出来た。「人間は踏み込んではいけない領域にまで足を踏み入れていると思いますよ」と話されたことにも共感した。

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全てのロープを段ボール箱に詰め終わると「手伝ってくれて本当にどうもありがとう」とチョコレートをくれた。「子どもみたいでごめんなさい」と笑う姿は少女のよう。なんか嬉しかった。僕より20才以上年上なのに、そんなことを感じさせない作品。当たり前のようにエネルギッシュに搬入搬出の労働をこなす。お話ができて良かった。(海外でも活躍されている方のようでした

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会期中、会場に足を運んでいただいた方々に感謝します。今日も、搬出開始寸前に駆けつけていただいた方もいてほとんどお話も出来ず残念でした。

最終日だからと体調が悪いのをおして雨の中を来ていただいた方も。ひどく落胆した事を共有していただいて少し癒えました。

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そして安心な野菜まで。ありがとうございます(笑)

宣伝チラシを置いていただいた、ライフスタイルコンシェルジュにお礼を言いによったら、いつものように美味しい紅茶をいただいてしまう。忙しい時間の合間に、僕の作品も見に行ってくれたという。ありがとうございました。

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家で静かに打ち上げ。ひよこ豆で作るのがオリジナルのレシピだけど白いんげん豆を黒オリーブと炒めたものをつまみに。夕方寒くなったと、カミさんが今季初めてのストーブに点火していた。

ひとりでやっているから、なかなか作家の方と話す機会が無い。今回はこのエントリーで取り上げさせていただいた方以外にも、いろんな作家と話が出来て得ることがいろいろありました。単純におしゃべりが楽しかった。貴重な機会をありがとうございました。