Man on Wire

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 映画「マン・オン・ワイヤー」を観た。町山さんのPodCastを聞いてどうしても観たかった映画。
 「なぜ?」と聞かれても答えられない、それをやったからどうなるという事を本人も説明も出来ないのに時にそれでも行動してしまう人間の不思議。この国では「なぜ?」という問にきちんと答えられないと時にすぐに社会からバッシングを受けるけどね。
 この映画はノンフィクション。ニューヨークに(9.11で倒れた今は無き)ツインタワーが建設されることを知った主人公”フィリップ”が高層のビルの間にワイヤーを渡して綱渡りをする!という思いにとりつかれ実際にそれを成し遂げるまでのドキュメンタリー。言ってしまえばただそれだけ。
 「なぜ?」「それをやって何の得があるの?」それだけが気になる人にはこの映画はおすすめ出来ません。「なぜ?」という問いに対する具体的な答えは提示されません。でも、僕と同じように人って説明できない激情に突き動かされて動いてしまうことがあるよなぁと感じている方には、6年に渡る困難を乗り越え厳重な警備の隙を突いてツインタワーにワイヤーをかけることに成功し、とうとう綱渡りの一歩を踏み出した瞬間に共感と幸福を感じること必至です。ただ、そこに至るまでの過程は何年にもわたって詳細にフィルムに収められているにもかかわらず、遂に踏み出したツインタワーの綱渡りの部分だけは数枚の写真で示されるだけ。フィリップが不法侵入と社会びんらん罪で犯罪者となったため世紀の挑戦をおさめたフィルムは全て警察に没収されたからなのか?でも監督の再現ドラマ、実際の16mmフィルム、インタビュー、写真による構成と編集が見事なため、ワイヤーの上にポツンと立っているフィリップの写真を見るだけで僕は静かな感動に包まれていた。実際にはワイヤーを張るまでにクタクタになって綱渡りをするだけの体力はもう残っていないのではと仲間が思ったにもかかわらず実際には45分間も高さ411mの60mのワイヤーの上にいて8回も往復しワイヤーの上で寝て、ひざまづいたりもしたのだ。そして、この行為はこんな風に呼ばれている「史上、最も美しい犯罪」

犯罪ってなんだろうね。