軽やかなダンスのためのすきま 再

久しぶりに「軽やかにダンスのためのすきま」という作品を作った。

10代も20代も、生きることはなかなか大変で苦しかった。30代はまた別の意味でとても苦しかった。自分のこと、親との関係。20代半ばで結婚したカミさんとの関係を築くのは30代になっても大変な作業だった。必死に関係を作っていた。
どんな時でも何があってもあいさつはきちんとする、とか今では体に染みついて普通にできる事もルールとして作っていった。喧嘩になっても大声は出さない、っていうのは村上春樹が夫婦の間で決めたルールと知って即とりいれた(笑)大声出すと感情的になって無駄にエスカレートする。「夫婦」をやっていくための「仕事」もお互いが全部試してみた。例えば1ヶ月だけ僕が家計を担ってみたことがある。悲惨な結果になったのでそれ以来僕は家計にはタッチしていない。中華とイタリアンは僕が担当、和食はカミさんとそれぞれの得意なところを「夫婦」で担当するように実験と、実践でやってきた。
「夫婦」の関係が苦しい頃、理想の形を探していたときに「ふたり」の関係を考えて作っていた彫刻のシリーズが「軽やかなダンスのためのすきま」

恋愛の時は強く抱きしめあってさえいれば幸せで、時間さえ止まれば良いと思っている。だけどそれでは「夫婦」として、人生というダンスを前を向いて共に歩んでいくことができない。だからといってそれぞれが勝手に生きていくのならふたりで生きていく意味が無い。協調してふたりの生活を形作りながらもお互いがそれぞれのダンスを踊るためにはふたりの間にすき間が必要。空疎ではない親密なすき間が。その距離感を探していた。お互いが親密なすき間を保ちながら全体としてバランスのとれた形は可能なのだろうか。

石の二重螺旋は自分の作品以外では今でも見たことが無いし、はたしてそんなものが出来るかどうかわからず試行錯誤をしていた。最初の頃は失敗して完成間際によく折った。ふたりの関係の未来かとぞっとした。遂に出来たその「形」に自分が救われて日々の生活の中に置いて、時々目に入れながら生活していたのだけど、大震災のあった年にその作品はお嫁に行ってしまった。

もう一度、時々目にしながら暮らせるように前とは少し形を変えて作っていた。梅雨の中、今日完成した。

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先日まで作っていた、繊細で壊れそうで今までで作るのが一番難しく、石積みをして精神集中してから作っていたのはこの「軽やかなダンスのためのすきま」を水平方向に横に大きく展開した作品です。それは個展で初披露するので写真を載せられません。是非、7月13日からの個展に見に来てください
その作品のもとになった上の作品もギャラリーの同じ空間に並べたいという思いもあったので再び作りました。

 

既に梅雨。個展までの残り日数に雨で制作できなくなる日があるかもしれないのを忘れてた。焦る。

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泊まりで仕事に出かけるカミさんを早朝、新幹線の駅まで送ってそのまま仕事場へ。

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お店を広げると片付けるのが大変だけど今日はカミさんもいないので昼食も家に戻らず日没までぶっ通しで制作。だから効率優先で石を磨くパッドを杉の制作台に並べる。

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雨が時折強くなる。

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朝靄に煙っている。

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昼食の時だけ雨が小降りになる。太陽の神様ありがとう。仕事場に何かの時の非常用に置いてあるカップラーメンとミネラルウォーターを湧かして昼食。1週間に3食前後食べていたカップラーメンだけど、原発事故の後、ほとんど食べなくなった。自然治癒力が下がりそう。今日は仕事優先だからカップラーメン。岡崎の八丁味噌使ったカップラーメンは美味しかった。母親の田舎は愛知県なので子どもの頃、夏休みになると行っていたおじいちゃんとおばあちゃんのいた愛知の八丁味噌はソウルフード。お袋の味。

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一日、雨。

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玉石も濡れていた。

 

ふたりで、軽やかにダンスを踊るのはまだまだ難しいですが、少なくとも30代からの実践は無駄ではなかったと感じる日々です。