アパートの友だち

カミさんが東京の 学校で一緒に歌を勉強して同じ安アパートで暮らした仲間四人が四半世紀を経て明日集う。北は盛岡、南は沖縄から。
一足先に着いた方にお茶を教えてもらう。俺、相当間違っていた。作法に意味があり、もっと驚いたのは「味」そのものが全然違ってとても美味しかった。食いしん坊にはここ大事なとこ。

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抹茶が好きで子供の頃から飲んでいる。コーヒーが嫌いなので受験勉強の時もよく抹茶を飲んでいた。勉強しないで深夜ラジオを聴いていただけだけど。でも、お茶を習ったわけでもないしただ茶筅でかき混ぜて飲んでるだけ。
友だちがいいね、と褒めてくれたこの器はおばあちゃんが80の手習いで始めたもの。すごく気に入っている。手がよく動く人の血が僕にも流れていると思うと少し勇気が出る。ひいおじいちゃんは船大工だったって言うし。

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使っているものは同じ道具なのに、この泡のキメの細かさや、美味しさに驚く。
=忘れないようにメモ=

器も茶筅もお湯に通す。お湯を通して器も温める。器の抹茶をならしてからお湯を注ぐ。スナップを効かせて手元だけでかき混ぜる。そしてその時間の短さに驚いた。僕のやっていた時間の1/5くらいか。やればやるほど苦くなるんだそうだ。器の景色の良い正面を相手にむけて。飲む時は正面を外すために2回回し、正面で返すために飲み終えたら2回回す。
お茶をやられている方には当たり前すぎて笑ってる顔が目に浮かぶけど。今度から習ったようにやってみる。

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夕方、歌のレッスンで東京に行っていた沖縄からの友だちも合流。もうひとりは明日、盛岡から駆けつける予定で、今晩はふたりの友だちが我が家に泊まる。今宵のメインは沖縄からの友だちが一足先に沖縄から送ってくれていたゴーヤでチャンプルー。作り方を習ってかみさんが作ったひと品は苦くて美味しかった。(ピンぼけだったのでwaterlogueで変換)

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親元を離れ安アパートで共に励まし合い助けあいながら勉強していた彼女たちの会話を聞かせてもらいながら、今もお互いに会いたいと思うこんな関係を大切にしていて実際に会っていることが、奇跡的なことのように感じる。

昔話はいつしか音楽や美術の表現の話しに変わって僕も会話に混ぜてもらって、とても刺激的な夜だ。だけどこれだけで終われないのが、今のこの国の悲しい現実。ジュゴンの泳ぐ沖縄の海の事とか、基地のこととか、原発事故のこととか、放射能の隠蔽とか、水俣のこととか。国の暴力と隠蔽。ここにも真っ当に「怒る」人たちがいた。

そしてお礼も。ひとりは僕の石の花器を初めて買ってくれた人でもある。

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そしてもうひとりの友だちは大震災の年に「太陽の神殿」という僕の石の彫刻を買ってくれた。安い買い物ではない。今も、作品が気に入ったからとしか言わないけど大震災と原発を経験した僕らを励まそうという意味合いが大きかったと思う。だから昨日、最終日の個展で盛況なところを見てもらえたのは良かった。我が事のように喜んでくれた。「良かったですね」と何回も何回も言ってくれた。

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宮城に来て数年経った頃、あまり人に会うこともなく淡々と石を彫っていた時に一番話しをしていた相手は「太陽」だった。僕はいわゆる宗教を信じていないけど、豊かな自然や大いなる存在を太陽に象徴して眩しい太陽を直接、見ては「太陽の神様、ありがとうございます」と言っていた。雨の日にも「太陽の神様、ありがとう」と言えるように自分のためだけに「太陽の神殿」を作った。僕だけの神棚のような。自分の手元において、一生手放すことは無いと思っていたこの作品は今、関東で友だちの家の玄関を飾っている。自分が手番したくないくらいに大切な作品だけが誰かの元に行くことになるのは、でもやっぱりあたりまえの事かもしれない。

また新しい形で、太陽の神殿を作ろうかと考えている。