原発事故の責任者の強制起訴に思う

福島第一原子力発電所の事故を巡って、検察が不起訴にした東京電力の元会長ら旧経営陣3人について、東京第五検察審査会は「大きな地震や津波の可能性があったのに目をつぶって何ら効果的な対策を講じようとしなかった」などとして2回目の審査でも「起訴すべきだ」と議決しました。これによって元会長ら3人は業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されることになり、未曽有の被害をもたらした原発事故の刑事責任について今後、裁判で争われることになります。
NHKニュース 7月31日 17時55分

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東京電力の原子力発電所で起こった未曾有の事故は誰ひとり責任を問われることが無い。たったひとりの逮捕者も出ていない。
人や大地に放射能をばら撒いても誰も捕まらない。海に廃油を少し流しただけでもすぐに捕まるのに、放射能汚染水を今でも毎日大量に流し続けても誰も捕まらない。
2006年に、その当時も首相だった安倍首相は、国会で共産党の吉井英勝氏に重大な原発事故が起きる可能性を指摘されながら「全電源喪失はあり得ない」と答弁し何の対策も講じなかったために、大震災の際には全電源喪失が起きて放射能事故に至った。その直接的な責任のある安倍首相もまた捕まらなかった。それどころか、放射能を浴びせられた僕らにも、原発事故にも何の謝罪もせず、再びこの国の首相になり、あろうことか原発を推進してきた自民党の党首として、解決していない原発を再度推進し、他国にも売り、武器も売り、この国の安全さえもアメリカに売りわたそうとしている。憲法違反の安保法案を無理やり通してでも。法律が真っ当に機能している国なら、捕まってもおかしくない人間が。

放射能の問題が解決していないのにオリンピックを招致するために「汚染水はアンダー・コントロール」と嘘を言った。今でもこの噓を信じているのは自民党にアンダー・コントロールされている人たちくらいだろう。仮設住宅で暮らしている人が10万人以上いて、与党は支援の打ち切りの時期を考えているのに、オリンピックの競技場の建設に2520億円も出すつもりだった。しかもオリンピックを日本に招致するのは「福島」の復興のためとも言った。東京オリンピックが決まった瞬間から、建築の資材も人材も東京に流れて東北の復興はさらに遅れている。被災した人にとっての最後の望みだった「子ども被災者支援法」ですら具体的に被災者を救うこと無く支援対象地域を縮小しようとしている。安倍首相は「福島」すら自分の手柄のための、単なる手段に使ったのだ。これほど罪深い事はない。

僕も、放射能をバラ撒いた奴らがきちんと誤ったら、もしかしたら許すかもしれない。だけど、謝らなかったら絶対に、許さない。永遠に許さない。許す許さないはやられた側が決めることなんだ。加害者が「何度、謝れば許してくれるんだ」と思ってる間は絶対に許さない。やられた側が、「もういいよ、そんなに謝るなら許すよ」と思った時だけ再び手を結び合う可能性が残されるんだ。奴らはきっと言うだろう、もう何度も謝罪はしました。それこそが慰安婦問題と一緒。そこには「何度謝れば許すんだよ」という新たな攻撃が始まっている。馬鹿か。何、逆ギレしてるんだよ。謝って、謝って、謝って、相手が「もういいよ、わかったよ。許すよ」って思えた時が一区切りでそこからが和解のための、やっと始まりなんだ。やった奴らにはそんな当たり前のことが全然わかっていない。いじめられたことがある者にとって、これは説明不要の当たり前のこと。だけどそれを説明しなきゃわからない馬鹿ばかりだから、いじめられた子が、今、この国ではどんどん死んでいく。当たり前だ。だって、この国では時の政権が最低の模範を示してる。

これだけ謝ってるのに許さないってなんだ?

やられる側にも問題があるんじゃないのか?

そういうメッセージは若い柔らかい心にはダイレクトに刺さるんだよ。

そういう奴らがこれからの学校で教える「道徳」を決めようとしているんだよ。

「僕は中小企業の経営者が、いちばんまじめに生きてるんじゃないかと思う。大企業や国家が今いちばんヤバいのは、自分でケツを拭いていないってところ。
誰かがどうにかしてくれるだろうとか、みんなで渡ったら怖くないとかってことの成れの果てなんじゃないですか?生き方も含めて全部そう。何かがあったら、中小企業のウチなら、僕がケツ拭かなきゃいけない。ここのところをもう一回、ひとりひとりのレベルまで持っていけたら日本に助かる道はあると思います。でもこれ、なかなか難しいですよね。」
「今回の原発関係者全員、誰もケツ拭かない。みんなで渡ってるからケツ拭かない。犯人がいないから。
これ、官僚がそういう仕組みを作ったのかもしれないけど、ケツを拭かない国家に明日があると思いますか?
中小企業は本気です。なぜか?法律違反したら本気で潰されます。行政処分で潰される。金がなかったら、金をかき集めてこなければいけない。それができないなら首を吊らなければいけない。
中小企業は最後に自分でケツを拭かなければやっていけないんです。それなのに国家、大企業、官僚、銀行はどうなってるんですか?」
矢沢永吉(ローリングストーン日本版8月号P35より)

やっと、責任のある人間にケツを拭かせる一歩が始まったかと思うけど、この国は三権分立と言っても、国策に関しては判決が驚くほど国に寄り添う。本当に分立しているのかってくらいに。原爆認定しかり、原発裁判しかり、水俣裁判しかり。福島原発の問題を指摘した佐藤 栄佐久 元福島県知事の冤罪とも言えるほどの裁判しかり。せめて、これからの裁判を注視します。

そうそう最近、戦争反対とか原発反対ってマイナスの事やると人生マイナスになるよね〜、やるなら世界平和だよね〜とか言って、問題を指摘してる人を嗤って嫌みなプロパガンダしてる人いるけど、平時ならともかく、この異常事態のまっただ中では、今、不当な弾圧を受けてる人を見てしまったら、それダメだよって言うの当たり前。目の前で殴られてる人いたら止めてやめろってとりあえず言う。僕だって、東電のお偉いさんが裁判にかけられることを喜びとは思っていないけど、仮設住宅でひどい暮らししてる人がいるのにお前ら、何、悠々自適の暮らししているって思うんだよ。それ、普通でしょ?だから「戦争反対」と「世界平和」のマイナスとプラスの両方やればいいんだよ。当たり前じゃん。っていうか放射能をこの身体に浴びせられた僕らが黙ったら、あとは浴びせた側の思うとおりに進む。やられた側の思いは声が無くなった時点で無かったことになる。望まなかったけど当事者にさせられた僕らには、何をされたか言い続ける責任があると思ってる。いや、本音はそんな消極的な思いじゃない。言わないのは罪だ、って思ってる。

今日の日を迎えることになったのは「福島原発告訴団」の粘り強い取り組みがあったからだ。豊かな自然の中で豊かな人間関係に包まれて暮らしていくはずだった武藤類子さんは、団長として裁判に取組む人生になるとは思ってもいなかったはずだ。悔しかっただろう。頭が下がる。僕も、その行動に胸を打たれたひとり。僕もカミさんも福島原発告訴団のひとりだ。以前、Facebookの「友だち」には公開したことがあったけど別に何も隠すことは無い。3年前の夏に書いた陳述書を貼っておきます。

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東電元会長ら3人強制起訴へ 検察審査会議決
7月31日 17時55分

東電元会長ら3人強制起訴へ 検察審査会議決
福島第一原子力発電所の事故を巡って、検察が不起訴にした東京電力の元会長ら旧経営陣3人について、東京第五検察審査会は「大きな地震や津波の可能性があったのに目をつぶって何ら効果的な対策を講じようとしなかった」などとして2回目の審査でも「起訴すべきだ」と議決しました。これによって元会長ら3人は業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されることになり、未曽有の被害をもたらした原発事故の刑事責任について今後、裁判で争われることになります。
福島第一原発の事故を巡って、東京地方検察庁はおととし、福島県の住民グループなどから告訴・告発を受けた東京電力の旧経営陣など30人余りについて、全員を不起訴にしました。
これに対し、東京第五検察審査会は去年7月、東京電力の旧経営陣のうち、勝俣恒久元会長(75)、武黒一郎元副社長(69)、武藤栄元副社長(65)の3人について、「起訴すべきだ」と議決しましたが、東京地検が再び不起訴にしたため、強制的に起訴すべきかどうか改めて審査を進めてきました。
その結果、市民から選ばれた11人の審査員のうち、8人以上が賛成し、勝俣元会長ら3人を「起訴すべきだ」と議決しました。議決の中で検察審査会は「元会長ら3人は原発の安全対策に関わるものとして津波による事故が『万が一にも』『まれではあるが』発生した場合にも備えなければならない責務がある」としています。
そのうえで「平成20年に東京電力が15.7メートルの高さの津波をみずから試算していたことは絶対に無視することはできず、災害が発生する危険を具体的に予測できたはずだ」と指摘しました。
そして「大きな地震や津波の可能性が一定程度あったのに、目をつぶって無視していたのに等しい状況だった。適切な対策を取っていれば、今回のような重大で過酷な事故の発生を十分に避けることが可能だった」と結論づけました。
また、今回の議決では当時の東京電力の姿勢について「安全対策よりも経済合理性を優先させ何ら効果的な対策を講じようとはしなかった」と批判しています。
この議決によって元会長ら3人は検察官役の指定弁護士により業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されることになりました。未曽有の被害をもたらした原発事故の刑事責任について、今後、裁判で争われることになります。

東電社長「コメントは差し控えたい」
東京電力の廣瀬直己社長は「原発事故によって多くの皆さまにご迷惑、ご心配、ご不便をかけ、大変申し訳なく思っています。検察審査会の議決に私どもからコメントすることは差し控えたい。東京電力としては、引き続き福島の復興に向けて廃炉や汚染水対策、賠償や除染などの取り組みを全力で進めていきたい」と述べました。

福島県知事「当時の状況など後世に残すべき」
福島県の内堀知事は「検察審査会の判断なので、コメントは差し控えたい。ただ、福島県は原子力災害の影響で、今も復興に向けて多くの課題を抱えている。東京電力は廃炉や汚染水対策をしっかりと進め、県民の安全と安心を最優先に対応してもらいたい」と述べました。
そのうえで内堀知事は3人の旧経営陣について、「原発事故当時の状況やそれまでの安全対策がどうだったのか、後世に残すことが重要だ」と述べました。そして「2度と福島第一原発のような事故を起こさないように、東京電力は事故の責任者として、しっかりとした対応を今後ともしていく必要がある」と述べました。

検察幹部「過失に対する考え方違う」
捜査に関わった検察幹部は「1回目の議決があったので、今回の議決に特に驚きはない。津波の予見可能性など過失に対する考え方が検察審査会と検察では全く違うと感じた。『万が一』や『まれではあるが』発生するものにまで備えておく必要があるならすべての重大な事故で責任者の過失が認められることになるのではないか」と話しています。
別の検察幹部は、「検察審査会の判断は尊重されるべきだが、災害をきっかけにした原発事故で個人の刑事責任が問われることには違和感を感じる。過失が問われた裁判ではこれまでも具体的な予見可能性が必要とされ検察としてすべき捜査は尽くしたが、震災後の市民の判断はそれとは違うのだろうと感じた」
と話しています。
また、別の検察幹部は「市民感覚ではあれだけの被害をもたらした原発事故にここでピリオドを打つわけにはいかないという受け止めなのだろう。検察審査会が市民を代表して判断した以上裁判の行方を見守るしかない」と話しています。