純喫茶 無伴奏の開店

純喫茶 無伴奏 店主のちひろさんとお店のオープンまでの話

■約5ヶ月前
地元の産直のお店「あぐりっと」で地元の友だち3人と陶器と石と染物の作品展を開催させていただいた。その時に、作品展会場の一角で珈琲とお菓子を出させて欲しいという話があって、僕ら3人とも来てくれたお客さんと珈琲を飲みながら話せて良い企画だ!と思って快諾して3人+ちひろさんのカフェで作品展が始まった。
その珈琲の美味しいこと、マフィンやメレンゲの美味しいこと。みんなファンになってしまって作品展後半は、3人展じゃなくてちひろさんも含めた4人展だと心の中で思っていたのは僕だけじゃないだろう。同じ空間、同じ材料、同じ器具でもいれるひとによってこれほど味が変わるのか、というのを体感してしまったのでちひろさんのいれる珈琲がいかに美味しいかは、飲み比べることで逆にありありとわかった。なかなか恐いことだ。
15042502誰が言うともなく、ちひろさん、カフェやってよ、作品展の時、移動販売カフェで営業してよ、という話になって。そうしたら実際、ちひろさんも将来、喫茶店をやるのが夢なんだと話してくれた。改めて、作品展の会場に出来上がったカフェコーナーを見ると、将来の夢を叶えるために少しずつ集めて、自分で塗装し直したりしたショーケースなど、全て自前の什器で作られていてそのセンスも素晴らしい。珈琲だけじゃ無くて、ちひろさんの焼いたメレンゲやマフィンがまた美味しくて、珈琲に合うのだ。
で、日に日にみんなが「お店やりなよ」って言うボルテージが上がっていったある日、「(仕事やめて)お店、やろうと思います」って。「実際に空き店舗も見て来たりしてます」ってちひろさん。
15042608そしたら、みんなあれだけやりなよ、やりなよって言ってたのに、急に心配になっちゃって「まずは車ひとつ、移動販売でいろんなところに行ったりして経験積んでからにしたら?」とか「どこかで修行してからにしたら?」とか、僕も少しブレーキかける役になってしまった。
とにかく作品展の間に、珈琲や焼菓子や喫茶店や彫刻や、それ以外にも夢とかいろんな話をして、打ち上げも一緒にやったし最終日には一緒に写真も撮った。でもその時は、それから半年もたたないうちに彼女が本当に喫茶店の店主になるなんて予想もしていなかった。

chihiroさんのカフェとも今日でお別れだ。いい年していまだ夢を食べて生きて行こうと思っている馬鹿者(な俺)にとって、キラキラした顔で本気で夢を語る人に出会えることほど幸せなことはない。今回の作品展で僕はどれだけ彼女にエネルギーをもらったか。コーヒー苦手なのにchihiroさんのコーヒー何杯も飲んだ。

■2015/08/08(開店まで25日)
初めて開店準備中のお店を見せてもらう。ひとりでコツコツ内装や掃除をやっていると聞いて、作業着を着てカミさんと。喫茶店を始めるきっかけになった場所にいたのに、何もしないではいられないではないか。何脚もの椅子が搬入されていた。梱包の大量の段ボールを3人でもくもくと畳んだ。(こんな大変な作業、ひとりでやるつもりだったんだ)

■2015/08/23(開店まで10日)
15082303もうすぐ開店。ひたすら床を磨く。前回来たときとは打って変わって、すでに営業中のお店の雰囲気。「無伴奏」らしく(っていうのも変な感じだけど)、自動演奏のピアノやレコードプレーヤーも置かれていた。
お店で出すパンは「ほーりーぱん」さんのもの。近くのイベントに販売に来ていたほーりーさんが帰りによって作ってくれたツナサンドのおこぼれにあずかる・幸

■2015/08/25(開店まで8日)
15082501お店の窓の特等席に僕の大理石の彫刻を置いていただけることになって、夕方、カミさんと持って行く。朝、3つの候補の中から選んでいただいた。
いろんなものをそぎ落とした空間にしたい、というのがお店のコンセプトなのに、その中に彫刻を加えていただいてとても嬉しい。
48時間振りにほーりーさんとも再会して(笑)ちひろさんの美味しい珈琲とほーりーさんの焼いたフォカッチャをいただく。なんだかしみじみ幸せ。

■2015/08/30(開店まで3日)
地域の方へのお披露目の日。カミさんもヘルプでウェイトレス。本格的なお店の雰囲気を壊さず、しっかり出来るように夜な夜なお盆を持ってカップを運ぶ自己練習をしていた事は内緒・笑

■2015/09/02(開店当日)
15090210とうとうオープン。3人展の会場で「私、喫茶店やろうと思います」と言うのを聞いてから半年も経っていない。その行動力や瞬発力に驚く。若いって良いなぁ。でも若いエネルギーだけで突っ走っているのではなくて、夢の実現に向けて以前から準備していたことが、開店までの間にうかがえた。そうじゃなきゃ、これだけ多くの人が声援を送り、力になり、応援しないだろう。そして10日以上、梅雨のように毎日雨ばかりだったこの日、「純喫茶 無伴奏」の開店を祝うかのように、それはそれは青空が美しく広がりました。

■2015/09/09(開店して1週間)
開店前の店の中が内装工事の物や、搬入された物であふれかえっているところや、大掃除の様子、そして開店初日の店じまいまでを撮った写真を写真集にまとめてプレゼントしに行く。プレオープンの日に一杯1000円のスペシャルブレンド珈琲を入れてくれているところを、少し緊張しながら見て写真を撮った。

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その所作や姿勢が美しくて、マネの絵を思い出した。「フォリー・ベルジェールの酒場」

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写真集の表紙は、そのちひろさんの写真とマネの絵を合成して作った。

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そして、5ヶ月前から珈琲が好きになった僕は、今日もまた、時間ができると、近くを通ると、無伴奏で珈琲を飲むのでした。

実は間隙をぬって今日も行ってた。 純喫茶 無伴奏。 空間て、ホント大事・幸

Tamaki Yamanakaさん(@yamanakatamaki)が投稿した写真 –

わざわざ他の人の珈琲とは別に、苦手な僕に日本茶や紅茶を用意してくださっていた優しい皆さま。僕はもう、大丈夫です。今まで、面倒くさくてゴメンナサイ。