相棒のコンプレッサー

夜の間にほんの少し雪が降ったみたい。

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台所から見える竹の葉は、粉砂糖を振りかけたみたい。

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大雪にならないで、外仕事が順調に進むことに感謝しながら仕事場へ。田んぼにもうっすら粉砂糖。

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仕事場のプレハブの前の滑り止めの石にも粉砂糖(の様な雪)

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今朝も冷えてるけど仕事を始める。昨日、6馬力までしか上がらなかったコンプレッサーに、祈るような気持ちで電源を入れる。

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駄目だ。昨日と同じ6までしか空気圧が上がらない。制作の途中で時々、圧縮空気で粉塵を吹き飛ばす。そうしないと制作に支障が出るから。仕方が無いので、昔、コンプレッサーを導入するまで使っていた電気式のブロワーを出してきた。

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コンプレッサーに比べるとものすごく非力だけど、とりあえずこれで粉塵を飛ばすことは出来る。だけど、コンプレッサーの圧縮空気じゃないと回らない道具もいくつも使っている。コンプレッサーを見てもらえる人の宛てが全く無いので、いつもお世話になっている車屋さんに連絡したら仕事場まで見に来てくれた。

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何でも新しいモノを買えばいいって社会になってしまって良くない、と直せるモノは直しながら使うことを大事にしている車の修理屋さん。去年、吹雪でぶつけてホイールを変な向きに曲げてしまって、いよいよ廃車を覚悟したときも、曲がったところを、いろんな技を使ってねじ曲げて直してくれた。すごい。

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忙しいのに、わざわざ来ていただいて恐縮。せめて温かいお茶をとワンバーナーで湧かしてシェラカップに入れて出したら「キャンプみたいだね」と笑った。

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で、設計図も説明書も無い古い機械をあちこち見て、余分なオイルを排出したりする(であろう)部分からいつまでも空気が漏れてると、木片で押さえつけることしばし。数分経って目盛りが動き出したら木片を離しても順調に空気圧が上がっていって、、、

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正常値の14馬力まで上がって、自動的に回転が止まった。やった!とりあえずこれで凌いで様子を見ましょう、と言って帰っていかれた。ありがとうございます!

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相棒のコンプレッサーが戻ってきてくれて嬉しくてひたすら制作。
とにかく子どもの頃から何でも描いて、作ってきた。親は本はいくらでも買ってくれたけど、基本おもちゃは買ってくれなかったので、全部自分で作った。ボードゲームも、絵も、空き箱でピンボールも。作りたいモノが直ぐに欲しかったからほとんど厚紙で作った。ハサミやカッターですぐに切れるから。ノリが乾く時間が待てなくて速乾のセメダインを使った。それでも待ちきれなくてセロテープをよく使った。陽に当たったり時間が経つと駄目になるから、ノリの方が良いことはわかっていたけど、とにかく早く完成させたかった。一刻も早く完成させたかった。

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だから宮城に越してきて、石彫りを始めたときに一番辛かったのは完成までの「時間」だった。頭の中に完成した形があって、紙で工作していた頃は数時間後には、遅くてもその日の内には完成できたのに、ハサミのようには石の道具を自由に使えなかったし、石は硬いからそんなに簡単に形を変えられない。想いと完成までのタイムラグが辛かった。
今はある程度道具を自分の手の延長の様に使えるようになって、切ったり削ったり割ったりで、最短距離で完成に近づけることが出来るようになった。少なくとも25年前よりは。それより石で形を作る「時間」が身体に入ったのだろう。自分も年をとって早く早くとだけ考えていた頃と気持ちも変わった。
今日は、クラフト展に向けてまた新しい形をいくつも作った。石のカケラを見ると、どんなモノにしようか考える前に形が浮かんで割った方が良ければ割って、切った方が良ければ切って、次々に大小様々な形が次々に生まれた。そして(そうだ以前は気持ちと形が出来るまでのタイムラグが辛かった)って事を思い出していた。

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そこに、朝、来てくれた車屋さんがまた仕事場に来てくれた。「知り合いの業者さんを通してコンプレッサー屋さんを紹介してもらおうと思って連絡をとったら、ちょうど仙南(宮城県南部)地区を回っていたから、見に来てもらう事にしたよ」と言って、数分後にコンプレッサーの販売・修理を専門にしている方も到着。「お、しぶいロゴですね。なかなか無いですよ、このロゴは・笑」

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結論から言うと、50年前の機械の部品はもう無い。代替品で修理する方法を探ることは可能だけど、それよりこのままで使って、次は新しいのを買った方が良いと。それに壊れていたら6馬力までも上がらない。オイルの排出弁からいつまでも空気が漏れたのは、多分極寒で中が凍ったせい。温かくなったら多分、普通に動きますよ、と言うことだった。それにしてもプロでもこれくらいの年代物が現役で動いているのは見る機会は少ないそうだ。逆に言うと、この年代のだからこそ今でも動いている。今の時代に作られたコンプレッサーで50年後も動くモノはまず無いだろう。とにかく材料の厚みが違う。鉄の厚みが違う、と言うことだった。中古で地元の方から買ったこのコンプレッサー、ラベルを見ると [昭和42年12月納] となっている。次に買うときは僕の様な仕事だったらどんなコンプレッサーが良いかいろいろ教えてもらったけど、相棒!もう少し、一緒に仕事しておくれ!

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3時過ぎてからの冷え方が半端無かった。でも次々に形が出来て、楽しくて寒さを忘れて夢中になった。気が付けば車屋さんとコンプレッサー屋さんが来てくれた時以外は、休憩もせず、お茶も飲まず、ぶっ通しで仕事して日没だった。

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道具を片付けたら、急に腰が痛くなってきたけど(年だから)あっという間の一日だった。

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何より、相棒のコンプレッサーは壊れていなかった。今日もよく働いてくれた、ありがとう。月がきれいだ。

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もし、明日も極寒だったら休んでいていいよ、相棒。明日はコンプレッサー無しで仕事するから。