最強のふたり

 カミさんと仙台で映画を見てきた。
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 劇場で映画を見たのは実に1年8ヶ月ぶりだ。2011年の1月に「ノルウェイの森」を観たのが二人でみた最後。「ハーブ&ドロシー」がひとりで観た最後。その後に原発事故があって、ネットで原発や放射能関係の動画を見まくったけど「映画」は観られなかった。隣町の視聴覚ホールで自主上映の「ミツバチの羽音と地球の回転」を観たけどこれも「原発」をもっと知るために行った。
 半年前にいわゆる「映画」を観た。劇場ではなくてappleのiTunes Storeでレンタルして自室のiMacで「127時間」を。過酷な状況から生き延びる勇気が欲しかったんだろう。
 劇場で映画を楽しむような精神状態じゃなかった。結局、「普通」の映画を劇場で「普通」に楽しめるようになるまでに1年半もかかってしまった。今でも「普通」では無いけど。どこもかしこも。
 そして、その1年半の間にすぐ近くの隣町の映画館はつぶれてしまった。仕事して夕食を食べた後で出かけて缶ビールを飲みながら(帰りはカミさんが運転)、新作映画を見られるのはぜいたくだった。ハリウッドや日本のくだらない恋愛映画ばかりで、観たい映画はなかなかかからなかったけど残念。
 もひとつ残念なのはカミさんとふたりなら、朝一番やレイトショーをわざわざ選ばなくても、いつでもふたりで2000円で見られるようになっていた。要は僕が年をとったからだ。年をとった特典てなんか受け入れ難くて少し悲しいけどこうやって老いを受け入れる準備をしていくのだろう。
 いろいろあったけど、劇場で映画を再び観ることになった映画としては、今日の映画は良い選択だった。
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 事故で下半身が麻痺した大富豪と、彼が自分の介護人としてやとったスラム街出身の黒人の物語。これであらすじは言い尽くされている。それほど物語はシンプル。ただこの黒人青年ドリスは介護の仕事がしたかった訳ではなくて、仕事を求めたけど不採用になった通知が3通あればもらえる失業手当目当てだったから面接でいきなり「早く不採用にしてくれ!」と言い、大富豪フィリップは何故か採用する。
 ドリスは介護の経験なんて無いから、やり方をいちいち教えなくてはいけないけど、今までの多くの「経験者」と違っていたのはフィリップの事を身障者として腫れ物に触るように接するのではなく「普通」に接するところだった。
 そのことで、事故で下半身が麻痺した大富豪と、介護人としてやとったスラム街出身の黒人の「物語」は「普通」では無くなり始める。そして人間に対する愛情に包まれた関係を見せられ幸せな気持ちにさせられる。これが実話を元にした物語というのもいいじゃないか。
 本編とずれるけど「ダンス」のシーンがとても良かった。ダンスというのは生きるエネルギーに直結している。鳥だって動物だって求愛のダンスがあるくらいだ。ダンスは命の問題なんだ。とディスコで踊りまくっていた世代のおじさんは、でも心から思うのだ。このシーンは泣くところじゃないんだろうけど、おじさんはひとりで泣いていた。いいシーンだ。
 僕がカミさん誘う映画は選択に失敗してひどい映画の事が多く、見終わると悲しい気持ちになって帰ってきてばかりいた。でも今日はカミさんも僕も笑いっぱなしで見て、観終わったカミさんが「面白かったね」と。よかった、良かった。たまにはこれからも劇場で映画を楽しもう。ふたりで2000円だし・悲 12092320.jpg