古屋菜々作品展

蔵王にある素敵なギャラリー、ミュゼマエナカへカミさんと出かける。古屋菜々さんの作品を見るのを心待ちにしていた。

15053108

2年前、仙台で鍛金の嵯峨 卓さんと2人展をやられていて古屋 菜々さんの作品を初めて見た。ぬるっとした金属の表面に思いがけない「木目」のような模様があって、なんかとても衝撃的で、iPhoneにメモをしておかないと今ではなんでも全部忘れてしまうのに、その作品と「ダマスカス」という技法の名前だけは鮮明に記憶に残っている。

15053104

ミュゼマエナカでその作品に再会できるのにいかないではいられない。
これです。僕が衝撃を受けた木目のような模様をまとった金属。鏡の上に置かれています。

今日は作家の古屋菜々さんが在廊していたので2年前には聞けなかったことを、どんどん聞いたら、ていねいにいろいろ話していただいた。製作途中のダマスカスの金属の固まりを「石をやられているなら持てるでしょう」と持たせていただいたけどずっしりと重い。目の前の小柄な女性がこれと格闘しているのかと思うと、そのエネルギーもすごいな、と思った。
写真の撮影と掲載を許可していただいて撮らせていただいたので以下に数点だけ掲載します。許可どころか、透明なケースに光が反射してうまく撮れないでいたら、わざわざケースを外していただきました。ありがとうございます。

15053105

2年ぶりに見てもやっぱりすごいな。種類の違う薄い金属板をミルフィーユのように交互に重ね、加熱や叩くことで圧着し、複雑な模様を出すためにさらに複雑に圧力をかけるという気の遠くなるような作業。

15053106

あまりやられている方がいないこの技法は、ほとんど独学で身につけたというのもすごい。

15053107

ギャラリーを入って正面の鉄の作品。もし行かれたら中を覗いてくるのをお忘れなく。うっとりする形が待ってますよ。

ガラス張りの向こうは一面の美しい緑。最高の季節。緑を見ながら、マエナカ夫婦と奈々さんとのおしゃべりの時間は至福でした。DMにもなった絶滅した鳥を題材にした作品「モアのいた日」にまつわる話は特に興味深かった。原発についての話も普通に出来て共感する部分が少なくなかった。豊かな土地で、羽根を使わないで生きる(捨てる)ことを選択した鳥。そのことで得たものは少なくなかったけど、後からやってきた「人間」に対しては羽根で飛んで逃げられず絶滅させられる。選択。変化。まさに現代の人間の暮らしも同じような事が問われているのかもしれない。原発は人間の未来のために選択するべきものか捨てるべきものなのか?

作品展ではダマスカスを黒や朱の漆で着色したジュエリーや、ダマスカス以外の鉄の造形などもあります。今の季節、緑を借景にしたガラス張りの空間で作品を見るのおすすめですよ。ダマスカスの作品の魅力は写真では半分も伝えられない。
ミュゼマエナカ facebookページ